毒蝮 な、「えっ、どうして?」って思うよな。理由を尋ねると、「席を譲ったことを指摘されると、席を譲らなかった自分がいたたまれない気持ちになるから」っていうんだよ。要するに、運転手の感謝のひとことを素直に受け取ることができないんだな。

俺としては、「こういう小さな善行は周囲の人たちも幸せな気分にするものなんだ」と伝えたかった。けれども、少数とはいえ、まったく逆に感じる子もいた。「あぁ、いまはこういう時代になりつつあるんだな」って感じたよ。

もちろん、それがいまの時代であって、違う感想をいった子が悪いといいたいわけではないんだけどな。

玉袋 いやぁ、確かにいまはそんな時代になりつつあるんでしょうね。むかしだったら、席を譲ることもあたりまえで、運転手が感謝の言葉を告げるのもあたりまえのことだったから、そもそも新聞に投書することもなかったでしょう。そして、投書しても掲載されることもなかったはずですよ。けれども、現実はまったくその逆なんですね。

毒蝮 だろ? いまの日本には、なんともいえないものが底流に潜んでいるような気がするんだ。いわば、「小さな違和感」とでもいうのかな? いまはまだ小さいけれど、この感じが次第に蔓延していくような嫌な予感もしているよ。

玉袋 「いたたまれないんで降ります」か……。コミュニケーション不足のいまの時代っぽいエピソードだけど、なかなか考えさせられますね。

毒蝮 もしもこういう意見があると知ったら、運転手も「今度はアナウンスするのをやめようかな……」と考えるかもしれない。そんなことが積み重なって、これからの日本にはさらに不寛容な、ささくれだった日常が訪れるかもしれない。

いまはまだ「小さな違和感」かもしれないけれど、あっという間にこうしたことがあたりまえになる時代がやってくる。俺はそれを本当に心配しているんだよ。