ホテルや休憩所のトイレに期待し…

クライストチャーチ国際空港でトイレに駆け込み、水を流した。ここでも水は渦を巻かず、威勢よく集まり、便器の排水口の穴に落ちた。個室のドアに箱が取り付けてあり、そこからペーパーを取り出す仕組みになっていたのだけが珍しかった。

ユミちゃんは「空港だからだよ。ホテルとか観光地の休憩所のトイレなら渦を巻くよ」と、予想した。しかし、ホテルのトイレも渦は巻かず、一気にドドッだった。

クライストチャーチ国際空港のトイレの個室のドアに箱が取り付けてあり、切ったトイレットペーパーが入っていた。引き出して使用する(1984年4月、しろぼしマーサさん撮影)

新婚さんたちと観光バスに乗り込み、草原と羊の群れと羊を動かす賢い犬たちを毎日眺めて、テカポ湖、ミルフォード・サウンドなどを巡った。新婚さんたちもユミちゃんも、澄み切った空気と自然の美しさを満喫していた。

しかし、私はお土産店や休憩できる建物に入ると、トイレを目指した。どこのトイレも素朴で綺麗だが、便器内は渦を巻かず、一気にドドッと水を落とし込む。ワンパターンな水の動きに、私は疲れを感じてきた。

帰りの飛行機で落ち込む私に、ユミちゃんは、「眠れない時に『羊が一匹、羊が二匹…』と数えると眠れると言うじゃない。羊ばかり見ていたら、バスの中でぐっすり眠れたよ」と、睡眠と羊の関係を解明できたことで、この旅に満足していることを強調していた。

あとでユミちゃんとお互いに撮影した写真を交換したら、テカポ湖もなにもかも写真が素晴らしく、トイレに集中せず、じっくり観光をすればよかったと深く後悔した。

編集長に結果を報告すると、編集長は「自分が行って、確かめないと、真実は分からないものだ」と、感慨深げに語っていた。

先日、日本のトイレメーカーに聞いたら、ドドッと落ちるのは「洗い落し式」と呼ぶとのこと。最近、トイレメーカーが力を入れている「節水型トイレ」は、便器の形状や便器の表面が工夫され、渦巻状に水が流れ、少ない水で排泄物を綺麗に流せるそうだ。

現在のニュージーランドのトイレはどうなのだろうかと思った。

そして、インターネットを見て驚いた。私の旅から約30年たっても、北半球と南半球の渦が逆になることを研究し、台風だけでなく、便器の流水にもおよんで調査結果を発表している人たちがいることだった。なんだか嬉しくなった。          

ニュージーランド南島の草原を移動するため観光バスが走る道路を横断する羊たち(1984年4月、ユミちゃん撮影)
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