最後に「自分の発言には責任が伴う」ことを忘れてはいけません。
ネットで発言するというのは、車の運転と似ています。違うのは、「教育をされてきたかどうか」なのです。事故を起こした時、「免許を取り立てだったので」と抗弁したところで、初心者であろうとベテランドライバーであろうと、罪は一緒ですよね。
私たちは運転免許以前に、交通安全のルールを小さい頃から教育されてきましたが、ネット上のマナーはほとんど教育されてこなかった。
今のネット社会は、みんなに道具(車)を与えたけれど、安全教育はしていませんという状態。乗り方もルールもわからないのに時速100キロで走行していれば、あちこちで事故を起こすのは当たり前です。
また、「ハンドルを握ると人が変わる」という人もいます。ネット上では、自分の感情や行動が変わってしまうこと、優しい人でも言葉が荒れやすく、怒りや愛情といった感情も盛り上がりやすいということを認識すべきです。そしてひとりでパソコンやスマホに向かっていると、個人の場のような気がするけれど、「自分自身がメディアなのだ」と意識して使わなければ、失敗します。
心理学的には、人は面と向かって争いになりそうな場面で、本能的に相手の微妙な表情の変化をくみ取りながら、なるべく衝突を避けようとします。しかし顔の見えないネット上では、それができません。
悪気はなくても、傷つけたり傷ついたりするのです。だからこそ、ネットはあくまでリアル世界のサブだと考えてほしい。日頃から信頼できるリアルな人間関係を築いておけば、ネットで被害に遭っても、周囲の人たちに相談できます。そういう場を持っていれば、傷ついた心も癒やされるのではないでしょうか。
今回の一件で、SNS上の投稿者を特定しやすくする制度改正の動きが出てきました。被害者が泣き寝入りしないためのルールは必要だと思いますが、法規制までは私は賛成しません。匿名で自由に発言できる世界は守られるべきです。日本のネット社会の自由な雰囲気を守るため、ルールを身につけよう。そのことを、ネットユーザーの皆さんに伝えたいと思います。