古関裕而(勇治)3歳の頃(大正元年)。明治天皇崩御により全国民が喪に服したため、エプロンに喪章をつけている。自動車の玩具が見える。当時はニュースタイルの車(写真提供:古関裕而の長男・古関正裕さん)
窪田正孝さんが主人公を演じるNHK連続テレビ小説『エール』は、名作曲家・古関裕而(こせきゆうじ)の人生をモデルにしている。6月最終週から放送を一時休止し、第1回から再度放送されている。先週から今週にかけては、主人公古山裕一と、のちに妻となる音(二階堂ふみが演じる)の幼年時代の物語。遺族にも取材して古関の評伝を書いた刑部芳則さん(日本大学准教授)によると、史実と重なることも多いようでーー

※本稿は、評伝『古関裕而 流行作曲家と激動の昭和』(刑部芳則・著/中公新書)の一部を、再編集したものです

音楽少年の誕生

古関裕而(本名は勇治)は、明治42年(1909)8月11日に福島県福島市で父三郎次(唐沢寿明さん演じる三郎のモデル)と母ヒサ(菊池桃子さん演じるまさのモデル)の長男として生まれた。

古関家の当主は代々三郎次を襲名し、隠居すると三郎兵衛と名乗った。裕而は九代目であった。長い間子供ができず、養子をもらおうかと思っていたところに生まれたため、裕而は両親に溺愛された。5年後には弟の弘之(ひろし/佐久本宝さん演じる浩二のモデル)が生まれている。

『古関裕而 流行作曲家と激動の昭和』(刑部芳則・著/中公新書)※電子版もあり

生家の呉服店は「喜多三(きたさん)」と号し、番頭、小僧を十数人抱える老舗であった。店内には当時では珍しかったレジスター(ナショナル金銭登録機)を置いていた。店の繁昌ぶりがうかがえる。

三郎次は音楽が好きで、家では蓄音機から浪曲、民謡、吹奏楽などが流れていた。これが古関と音楽との出会いであった。

とくに、お伽歌劇「ドンブラコ」(作曲・北村季晴)や「目なしだるま」(作曲・佐々紅華)には、「強く心を揺すぶられた」という。そしてレコードを聴きながら絵を描いていた。彼は晩年に絵画と接する時間が多くなるが、その才能もすでに幼少期にはうかがうことができる。

明治42年(1909年)頃。古関の生家、喜多三。当時では珍しかった英国製レジスターが、店頭に見える(写真提供:古関正裕さん)
明治43年、喜多三呉服店店内(写真提供:古関正裕さん)