概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める伊藤俊行編集委員と、調査研究本部の伊藤徹也主任研究員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

米国とイスラエルによるイラン攻撃の開始から4月で2カ月となった。米国の威圧とイランの挑発から、戦闘終結に向けた見通しは予断を許さない。中東の混乱は日本のエネルギー安全保障に直結する。中東の複雑な構図を読み解いて、対策と貢献を考える必要がある。番組では中東の専門家を招いて、イラン情勢を連日伝えている。出演する伊藤俊行編集委員に聞いた。

イラン緊迫中東の構図

「抵抗の枢軸」とイスラエル

「イランがイスラエルと戦うハマスやヒズボラを支援する関係性は変わっていないだろう。ただ、ハマスやヒズボラは弱体化している上にイランも攻撃にさらされており、支援は縮小している可能性が高い」=坂梨祥氏

「イランとフーシは相当緊密な連携をとっている。イランとしては長期戦を見すえて、様々なカードを切っていく必要がある。なかでも紅海を押さえているフーシを重要な切り札として温存してきた」=吉田智聡氏

伊藤徹イランへの攻撃開始から4月28日で2カ月となりました。米国とイランの間で停戦が一応成立して外交交渉が行われていますが、ホルムズ海峡の「封鎖」やイランの核開発を巡って互いに譲らず、現時点で戦闘終結は見通せていません。日本は中東に原油のほとんどを頼っており、中東の混乱は暮らしに影を落とします。中東を見る時、イラン、米国、イスラエルの3カ国はもとより、親イラン武装組織のレバノンのヒズボラやイエメンのフーシまで様々なプレーヤーが登場します。中東は宗派も民族も入り組んでおり、丁寧な理解が欠かせません。

伊藤俊番組は攻撃開始からイラン情勢を1日も休まず取り上げてきました。異例のことですが、それだけ今回の軍事作戦が世界の秩序や日本の安全保障に大きな影響を与えるからです。分かりにくい中東の構図を読み解くために、中東地域やエネルギー問題に詳しい研究者、中東政策に携わり現地に赴任経験のある元外交官などを招いて、様々な切り口を提供してきました。BSならではないかと思います。

例えば今回の攻撃は、イランとアメリカの対立に加えて、イランとイスラエルの対立がもう一つのカギになります。イランはこれまで、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ、さらにパレスチナ自治区ガザのハマスを支援して、「抵抗の枢軸」と呼ばれる反イスラエルの包囲網を築いてきました。4月23日のゲスト、日本エネルギー経済研究所中東研究センター長の坂梨祥さんは、イスラエルによるイラン攻撃は「抵抗の枢軸」への反撃の総仕上げを意味するとおっしゃいました。イスラエルはすでにハマス、そしてヒズボラへの徹底的な攻撃を行っています。最後にそれらを支援するイランを倒さなければ、イスラエルとしては安心できないというわけです。

伊藤徹イスラエルはなぜ、そこまでこだわるのでしょうか。同じ日のもう一人のゲスト、防衛大教授の江崎智絵さんはイスラエルの国内事情を指摘されました。イスラエルの国会は一院制で比例代表制を採用しており、第1党の党首が首相に選ばれても連立政権を組むことが通例です。ネタニヤフ首相は連立交渉の結果、相手が極右勢力しか見つかりませんでした。

ウクライナ侵攻から」4年
イスラル連立政権©️日本テレビ

伊藤俊やむを得ず発足した連立とも言えますが、江崎さんによると、ネタニヤフ氏がガザに侵攻してハマスの存在を許さないと決断してから、極右勢力との関係は強まっているといいます。イスラエルの国民は一連の攻撃をどう見ているのかを尋ねたところ、江崎さんは「国民にも自分たちの国を脅威から守らなければならないという高い意識がある」とおっしゃいました。イスラエルの国民1人当たりの国防費は世界的に見ても高い水準です。

伊藤徹残るイエメンのフーシの動向も注目されます。そこで日本で数少ないフーシの研究者、防衛研究所研究員の吉田智聡さんを4月2日のゲストに招きました。フーシは3月28日にイランへの加勢を宣言しました。

伊藤俊フーシが紅海の出入り口に位置するバブルマンデブ海峡を押さえると、イランはアラビア半島を挟んでペルシャ湾と紅海の両方を「封鎖」できることになります。フーシはイスラエルによるガザ侵攻以降、紅海で日本を含む外国船舶への攻撃や拿捕(だほ)を繰り返しており、世界経済への影響と脅威はさらに高まります。

ウクライナ侵攻から」4年
最新 石油輸送ルートに”新たな懸念”©️日本テレビ

吉田さんは、フーシとの関係がイランの強靱性を支える一つの要因になっていると見ています。フーシはイエメンで内戦を戦っています。フーシはイランの支援に頼っており、イランの革命防衛隊で訓練を受けているといいます。「抵抗の枢軸」は攻勢を受けていますが、イランが今後フーシを切り札としてどのように使うのかに注意を払う必要がありそうです。

ウクライナ侵攻から」4年
フーシ派©️日本テレビ