「いくつになっても、感動は人にとって本当に大事だと思うの」(黒柳さん)

戦争になると美は失われる

黒柳 最近、改めて感じるのは、美しいものを集めたり、愛でたりできるのは、平和だから。母は美しいものが好きだったけれど、戦争でいったんすべてを失いました。

戦争中、私たち子どもを連れて青森に疎開するとき、母は大事にしていたゴブラン織のソファの表地をハサミでジョキジョキ切って、それを風呂敷がわりにして荷物を入れて背負ったんです。それが唯一、家から持っていけたものでした。それが戦争というものです。

田川 あるとき徹子さんから、「戦争になったら、綺麗なものがすべてなくなるのよ。こういうものを見たり買ったりできるのは、平和だからよ」と言われて、ハッとさせられました。実際に戦争を経験なさっているからこその言葉だな、と――。

黒柳 美しいものは、まず破壊されますから。

田川 祖母は東京に嫁いだので空襲で着物が焼けてしまいましたが、大叔母の家はたまたま無事だった。田川啓二美術館には、僕が手がけたオートクチュールのビーズ刺繍のドレスのコレクション以外に、大叔母が持っていた昭和初期の着物なども展示しています。昭和初期の着物は、職人の技術が非常に高くて素晴らしいんです。

黒柳 戦争といえば、戦時中、空から銀色のくるくる巻いたものが落ちてきたことがあって。アメリカか日本のどちらが落としたのか知りませんけど、なんでも電波を妨害するものだとか。

キラキラ光るのが綺麗だと思って、拾って伸ばして本の間に挟んだり。ドロップ飴の綺麗な包み紙も大切にしてました。物がないならないなりに、可愛いと思うものを見つけるのは得意で。