「お墓に入る一員になったのかな」

伊藤 阿川さん、お連れ合いとお墓参りに行って、そこに入るつもりとおっしゃったじゃないですか。

阿川 はい。今のところ、まあ入らない理由がないし。

『サワコと比呂美 女じまい』(著:阿川佐和子、伊藤比呂美/中央公論新社)

伊藤 ちゃんとその、法事みたいな行事にも行かれてる。

阿川 そうそう。そういうことがないと、なかなかあちらの親族と会う機会がないですし。子どもの頃は親の教育がなってなかったから、墓参りは自分とは関係ないものと思ってました。でも、今こうやって亭主のほうの法事なんかに行くと、だんだんおば様たちと顔見知りになっていくの。最初はアウェイな気持ちだったのが、「亭主抜きでも遊びに来なさいよー」とかって言ってもらうと、こういう積み重ねで人間関係って築かれていくんだなーと思って。

伊藤 ああ、いいもんですね。うらやましい。

阿川 そうですね。だいたい後妻だし、本来はアウェイもアウェイじゃないですか(笑)。亭主には子どもがいて、そこらへんはちょっとデリケートな問題でもあるけど、皆さん、なんだかさりげなくやさしくしてくださるのね。そっちのお墓に入る一員になったのかな、っていう気持ちはありますね。

伊藤 そうなのね。私のあの、八つ墓村のイヤーな思い出とは雲泥の差。

阿川 あはは、まあ伊藤さん若かったから。私も、死ぬまでにはそういう親戚との関係性を少しずつ積み上げていかなきゃって思う。つまり、あちらのご親族とかそのあたりの人たちとの人間関係ができてくれば、私もそのグループのひとりだということを、自分で納得するのだろうなと。伊藤さんは、ご亭主の周辺と同じグループに問答無用で入らされてたまるか、っていう気持ちだったのでしょ?

伊藤 そうです。夫のことは好きだったからね。じゃあね阿川さん、そのお墓によく知らない人と入ってですよ、またぞろ知らない人がお参りに来る……。

阿川 誰かわからない下の世代にお花とお線香を供えてもらったとしても、「まぁこれもご縁だし」みたいな。どっちにしろ、私の死んだあとのことだからねぇ。何とも思わないかな。

伊藤 おお、なんとも真っ当だわぁ。私はホント、何も考えてないです。そもそもどこの誰ともご縁がないしね、今は。