「ラッキーなのは事実です。だからそこは否定しない。そして、そんな「強運」を呼び込むのはひとつの才能だと思うので、それを証明するために結果を出し続けていくしかありません。」

お金に翻弄されおかしくなった時期も

相続したことで、身のまわりはたしかに変わりました。まず、お金目当ての人が近づいてくるようになった。これはしかたがないのかな。葬儀の場で、親戚を名乗る初対面の人から、「自分も5000万円くらい遺産をもらえるはずだ」と言われました。そしていろんな人からカモられた可能性も高いと思う。

おばあちゃんから僕へと代が替わった瞬間に、マンションの管理会社が壁面掃除を提案してきました。1100万かけてやったのですが、あとで聞いたら相場は600万円程度だし、その時期にやる必要はまったくなかった。無知のままお金を持てばカモにされる。

今までつき合いのなかった人たちとも、対等に渡り合わなければいけません。それには不動産の知識を持つことが必要なのではないかと思い、少しずつ勉強を始めることにしたのです。

お恥ずかしい話ですが、お金を手にしたことで僕自身も、感覚がおかしくなった時期がありました。テレビ出演用衣装を、100万円ぐらいかけて全身高級ブランドで揃えたり、ネタを作りたくて、家賃が月40万円のタワーマンションに住んだり。

15億円相続した芸人の暮らしを撮りに、テレビ番組が次々に取材に来る。もっとテレビに出たいと、結局4年間住み続けました。家賃だけで2000万円。お金に糸目をつけず、周りの人にもおごりまくりました。みんなおだてて、ありがたがるけど、一方で僕への目は冷ややか。その時は自分でもわけがわからなくなっていたように思います。

苦しかったのは、何をやっても、すべてが「ラッキーなだけのくせに」と思われること。カスタネットのパフォーマンスが認められたのは、相続する前です。でも、「大金を相続したからでしょ」と、それまで築いてきたものまですべてを否定されてしまう。

ある時、かわいがっていた後輩芸人から酔ったはずみに「お前なんてカネだけのくせに」と言われまして。ああ、本音はこうなのか、と、ただただショックでした。

でも、ラッキーなのは事実です。だからそこは否定しない。そして、そんな「強運」を呼び込むのはひとつの才能だと思うので、それを証明するために結果を出し続けていくしかありません。

話が変わりますが、昨年の夏に所属していた芸能事務所を辞めて独立しました。それまでは、芸能活動が最優先で、不動産管理や飲食店のオーナーであることは「副業」だと言ってきました。でもどれがメインとかサブとかではなく、全部やるのが自分、全部が本業でいいと思えるようになったのです。