一発で覚えられる雑誌名『カニジル』

その雑誌の名前は『カニジル』に決まった。一発で覚えられる名前が、私の出した唯一の条件。ホワイトボードには200近い、各人が考えてきた雑誌名の案が並ぶ。議論の末に絞り込まれていく。

田崎さんが、米子鬼太郎空港に到着した時に驚いた光景。蛇口を捻ったら、カニの味噌汁が出る仕掛けが当時、イベントとして開催されていた。愛媛県の松山空港の名物・蛇口からみかんジュースが出てくる仕掛けと同じ発想。

『病院がなくなる』(著:結城豊弘/ビジネス社)

「蟹汁って地元では人気ですか?」

田崎さんの質問。

「そりゃー、境港は日本一のズワイガニ・ベニズワイガニの水揚げ港。カニの脚や身が入ったカニの味噌汁はね最近は少し高級品になったけれど、今でも普通に家庭でも食べるし、イベントで、振る舞われたりもする。カタカナにしたから『カニジル』ね。一度で覚えられるね」

「医療のことを『如何に知る』って意味も付け加えたらいいと思いますが」

写真家の中村さんが素晴らしいアイディアを言葉にしてくれた。

「いいねー。田崎さんの案に、中村さんの意味付けで行こう。カニの味噌汁は暖かくて優しい気分になるし、山陰の郷土料理。病院広報誌のタイトルとしては、今まで絶対ない」

興奮気味の私。

「原田さんが何ていうかなー。いいタイトルだけれど」

自分で言っておきながら少し心配顔の田崎さん。しかし、タイトルは『カニジル』で全員が賛成した。原田さんも「なかなか面白いねー」と二つ返事で賛同してくれたのだった。

名は体を表す。タイトルは、そのものの進む道や、制作者の思いを表す。神戸大学の栗木契さんの著書にあるブランディングの極意。『カニジル』の進む道が決まった瞬間だった。