ある時「はい」と手渡されたのは、縮緬の小風呂敷に包まれた手弁当。

「ついでだからね、食べる暇ないでしょ。何も入ってない寿司ご飯だから食べいいから」

それは漆の信玄弁当箱(お椀を二つ合わせたような三段重ね)で、上蓋を開けると内蓋がありお漬物! 二段目に酢牛蒡! 三段目は胡麻がパラついた、本当に何も入っていない酢飯です。この酢飯がぽわ~んとして美味しくて美味しくて。半年ものの梅酢だそうで、「梅! ただお酢でつけときゃ出来るの」。その梅酢は、引き続き我が家の宝になりました。

「牛蒡は叩いてちょこっと酢入れて、すり胡麻擂って混ぜりゃ終わり。暇な時? 暇じゃなくてもちょこっと作っときゃ色々ね? なんかの時あると嬉しいね」

お弁当箱にのど飴ひとつ入れて返すと、

「昔はお裾分けのお返しに、庭の椿一輪挿したり、マッチとかね? なんか入れて返すのよ」

なんて素敵な話がついてきた。