《着物の内干し》と評したリハーサルでは、いつも見事な着物技を眺めさせて頂きました。肩からすっとんとおりた着こなし、どこも苦しくなくて、胸元と帯周りはゆったり。でもきちんとしている。沢村さんならではの正義とお行儀がそこにある。

誰が真似できるわけもないが「着付けのコツは?」と伺うと、

「着るのよ。生きてるのと同じで、毎日着てれば出来ないことが出来るようになるでしょう? 着慣れて馴染んで、その先に着崩すって言うでしょ?」

ちゃんと生きて、何もサボらず、それを苦ともせず、生き慣れて、そして見事に生き崩しておられた。私がみた唯一の女性でありました。

いま桃井も、沢村さんが引退なさった歳にさして遠くありません。振り返ると、包丁を手に「今日も何か一品、ちゃちゃっと作っておこう」と思えるのは沢村さんがいたからです。私たちの先を沢村さんがサッサと歩いていてくれることに、また改めて感謝しています。

 

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