ツキノワグマの傾向
ツキノワグマのその類の行動は、私はまだ耳にしたことがない。ヒグマのほうが見た目の大きさもあって、その行動には恐怖を感じることが多い。しかしツキノワグマの行動は唐突で反射的な傾向があって、恐怖を感じる間さえない反面、攻撃(事故)につながる可能性が高いのではないか。
そしてもしこの唐突さがパニックから引き起こされているのならば、ツキノワグマはヒグマにくらべて臆病な性質であると言えるかもしれない。いずれにせよ、突発的行動に移るトリガーが軽いのはツキノワグマのほうであり、ゆえに遭遇が人身事故につながりやすいと私は考えている。
どちらにしても、最初から襲おうと思って攻撃してくるクマはまれである。突然襲われたと報告される人身事故のなかには、人間側がクマの存在に気づかなかったために突然襲われたと感じた、ということもあるだろう。
ヒグマとツキノワグマのどちらが怖いかは、やはりその人の経験や印象によって左右される。双方ともに危険があり、注意が必要なのは変わりがない。どちらにおいてもやみくもに恐れず、しっかりと対処することが重要だ。ちなみに私は自分の経験上、向き合って年数の短いツキノワグマのほうがやっぱり少し怖いなと思っている。
※本稿は、『日本のクマを追う 激動の自然環境を生きる、ヒグマとツキノワグマ』(山と溪谷社)の一部を再編集したものです。
『日本のクマを追う 激動の自然環境を生きる、ヒグマとツキノワグマ』(著:二神慎之介/山と溪谷社)
クマによる人身被害が頻発する現代に、気鋭の動物カメラマンが捉えたクマたちのもうひとつのリアル!
激動する自然環境のなかを生きるクマたちの真の姿はどんなものなのか?




