(十二月三十日から一月五日いっぱい、一切仕事をしないことにしよう)(中略)
夫婦とも、ただもう仕事に追いまくられ、ゆっくり話をする暇もなくて……これが、人間の暮らしと言えるかしら、とフト溜息が出たりした。考えたあげく、家人のスケジュールにあわせて、私も正月休みをとることにした。芸能界で仕事を断るのは、頼むよりもむずかしいことはわかっていた。格別、どうということもない脇役のわがままな願いに対して……かなり、風当りがきつかった。でも――それを通した。(中略)
この世界に大切と言われるつきあいも欠くことにした。(中略)
私たちのお正月を大切にしたかったから……。
(『わたしの献立日記』より)
「花へんろ」シリーズはとても楽しいドラマだったけれど……松山弁で苦労した。
東京育ちの私は、台本を受けとるとすぐ、原稿用紙に自分のセリフを一言ずつ、ひら仮名で抜き書きし、方言指導の先生が吹きこんで下さったテープを三度も五度も、よくきいてから、一字一字、自分なりの音符をつけてゆく。(中略)
本番がつづくと、つい料理はおろそかになり、手馴れたまぜずしでお茶をにごすことに。(中略)
B子さんがしきりに賞めてくれる酢めしは、わが家得意の梅酢の味。(中略)
「年中、この梅酢をたべてると、頭がよくなるらしいわ。そのせいかも知れない――この頃、松山弁がおぼえやすくなった……」
私の冗談をB子さんは半分、本気にして、「わぁ――私、絶対、その梅酢こしらえちゃう……」
その年の秋、めずらしく、B子さんから葉書がきた。
「成功、成功、大成功――お友だちがみんな、私のちらしずしにびっくり! 料理の天才だっていわれました……」
(『わたしの献立日記』より)
