原始時代の恐怖システム
野性の中での生活で、飢えや外敵による危険と隣り合わせだった原始時代と、高度に科学・文明が発達し、進化した現代社会とでは、環境もライフスタイルも比べるべくもなく大きく変容しています。そうであるにもかかわらず、その中で生き延びる術を担う脳のシステムが、現実に相応するようにアップデートされていないのです。
つまり、現代の最新ソフトウェアを、原始時代の旧式ハードウェアで無理やり動かしているような状態です。
このようなソフトフェアである環境と、ハードウェアである脳内システムのミスマッチは、身体や心にさまざまな弊害をもたらし、ストレスや心身の疾患、また「生きづらさ」の原因になることがあるのです。
一例を挙げると、食料の確保に苦労していた原始時代には必須で最適な機能であった「高カロリー食でエネルギー源をため込む」機能は、飽食の時代にあっては、甘いものや脂肪分たっぷりの食べ物の摂りすぎを招き、肥満やメタボ、ひいては生活習慣病の一因になっていること。また、人間を襲う野生動物から逃れるための恐怖システム(危険検知、闘争・逃走反応)の名残りで、日常的な事柄に対しても過剰反応を起こしてしまうことがあります。
たとえば、上司から呼び出しを受けると、「叱られるのではないか」とか「ひょっとすると左遷されるのではないか」などと、恐怖や不安を感じてしまう人もいます。
冷静に考えれば、ただ単に仕事上の指示を受けるだけのことかもしれないのに、ついつい悪いほうに、悲観的に考えてしまう……。これも実は、“原始時代の脳”によるものです。
過酷な環境で生き延びるためには「良いこと」より「悪いこと」「危険なこと」に注意を向けるようになります。そのため、脳は悪い情報や好ましくない事態の予測に反応しやすく、ネガティブ思考に陥りがちになるのです。
さらに、SNSでの過剰反応や炎上も、この原始時代の恐怖システムが引き起こしているともいわれています。
SNS上で一般的な見解とは異なるコメントや批判的な投稿をする人がいると、脳は「異質で、社会的に危険な人」とみなしてアラートを発します。それを受けて、人々はそのような人を、集団で過剰にバッシングしたり、排除しようとしたりするというわけです。
