孤独感が生じる原因を探る
ちなみに、ドイツ系ユダヤ人でアメリカに亡命した政治哲学者・思想家のハンナ・アーレント(1906〜1975年)は、著書『全体主義の起源』の中で、ひとりであることを「隔離」「孤立」「孤独」という3つの言葉で区別しています。
このうち「孤独」は、ひとりになることを自ら必要とし、自分自身と向き合う、いわば前向きな時間を意味するとされます。そうした状態は、ひとりでいたとしても、それは他者に依存しない自律性と自分なりの確固たる美学や価値観に支えられた豊かな時間だといえるでしょう。
たとえば、哲学者や科学者、芸術家の中には、自ら人や社会との距離をとり、ひとりで考える時間の中で才能や独創性を発揮した人がいます。もちろん、職業や才能にかかわらず、あえて人と群れず、好きなことに没頭したり、自分と向き合ったりして、ひとりの時間を大切にする人もいます。
最近よく話題になる「ソロ活」も、その良い例です。ソロ活はしばしば「孤独を楽しむこと」と表現されますが、ここでの「孤独」は、苦痛を伴う孤独感ではなく、自分の意思でひとりの時間を選ぶことを指します。脳が危険信号を出している状態としての「孤独感」とは、必ずしも同じではありません。
たとえば、寂しさをまぎらわすために始めたソロ活でも、ひとりの時間を楽しめるようになれば、孤独感が和らぐことがあります。そのとき、ひとりでいるという状況は同じでも、心の状態は変わっています。
つまり、ひとりで過ごしているという事実だけで、それが望ましくない状態だとは一概に決めつけられないのです。
話を戻します。「孤独」を、脳からのアラートが発されている状態、つまり「孤独感」ととらえるなら、前ページの図に挙げた4つの事象の中で、現代人は特に3「孤立ではないが孤独」の状態に立たされやすいといえます。
周囲に人がいるのに、ひとりぼっちだと感じる――そんな経験に心当たりはないでしょうか。
ひとりでも孤独感を抱かないことがある一方、人とのつながりがあっても孤独感が生じることがある……孤独感の有無は、周囲に人が多いか少ないか、ひとりでいるかどうかとは、必ずしも一致しないのです。では、何が孤独感を生むのでしょうか?
孤独感とは、「他者とのつながりがない、あるいは足りない」また「自分は理解されていない」と感じたときに生じる、つらく不快な感情です。
そうなると、人はどんな場合に「他者とのつながりがない、あるいは足りない」「自分は理解されていない」と感じるのか、という視点で、孤独感が生じる原因を探る必要があります。
※本稿は、『孤独脳 脳のSOSに気づき心と体を壊さない30の方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
『孤独脳 脳のSOSに気づき心と体を壊さない30の方法』(著:虫明元/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
本書では、今日からできる30の「孤独感を解消するコツ」を紹介しています。
職場やSNS、AIなど、現代社会ならではの孤独にも、脳科学の視点から向き合います。
孤独感に振り回されず、健康で自分らしく生きるヒントが、ここにある。




