「ミッドライフクライシス」と孤独
先にお話しした更年期の特徴的な孤独感のほかにも、この時期は孤立・孤独の「種」があちらこちらに撒かれている状態です。その代表例が、子育てを終えた後に訪れる孤独感、いわゆる「空の巣症候群」です。
子どもがいる場合、子どもは「思春期」に入り精神的に不安定、また親離れが進む過程で反抗的な態度をとったり親を無視したりと、これまでの親子関係が変化していきます。子どものほうから親との距離をつくっていることが、子どもの成長には必然でまた成長の証でもあると頭ではわかっていても、親は一抹の寂しさを感じるものです。
それから数年も経てば、子どもの親離れも完成形となり子育ての終焉を迎えますが、このときには心に穴が開いたような孤独感や喪失感(役割喪失)をおぼえ、ときには不眠、倦怠感、頭痛、食欲不振等、心身に不調をきたすこともあります。これが「空の巣症候群」で、特に子育てに熱心で生きがいのようにしていた母親に多く見られます。
また、このときに大学進学、就職などで子どもが家を出て名実ともに巣立っていくと、夫婦の関係性にも変化が訪れることがあります。
それまでは子どもを軸とした共通の行事や話題で成り立っていた夫婦間のコミュニケーションも、共通の話題もなく夫婦の会話はほとんどなくなり、一緒に外出する機会といえば、食料品の買い出しの荷物持ちに帯同するときくらいなどということも、よくある話です。
こうして、夫婦同じ屋根の下に暮らしながら、それぞれが孤立・孤独という状態ができあがってしまうのです。
その孤独の埋め合わせができる親しい友人でもそばにいればよいのですが、20代、30代、40代とそれぞれに多忙な時期を駆け抜けてきた今、気がつけばお互いに疎遠になっていて、今さら声もかけづらいという現実があります。その現実が孤独感に輪をかけてしまいます。
職場では、これまでひとかたならぬ努力を重ねて実績を積み上げ、それが認められて要職に就いたまではよかったのですが、自分の管轄部署で何か問題が起きれば、自分ひとりで重大な責任を負わなければならないという重圧と、人知れぬ孤独感が、常に肩にのしかかっている状態になります。
一方、ある程度までのキャリアアップはできたものの、もはや頭打ちの状態、あるいはいわゆる出世街道から外れ、この先はもう見えているという状況にあると、出世していく同期や後輩を後目に自分ひとりだけが置いていかれているという劣等感と焦燥感、孤独感にさいなまれ、自己肯定感が底なしに低下してしまいます。
