人生でいちばん音楽を楽しめている

結果はどうだったか。

私の半生を象徴する存在を手放すことには不安もありましたが、それはすぐに杞憂だと気づきます。それどころか、物理的な重荷を手放したことで、音楽体験は以前よりも軽やかで自由なものへと進化したのです。

サブスクで今人気のアーティストを気軽にチェックしたり、1960〜80年代の名盤をさかのぼって聴いたり。これまで触れてこなかった音楽に、自然と手が伸びるようになりました。作詞家や作曲家といった切り口のプレイリストも新鮮でした。「誰が歌っているか」ではなく「誰が作っているか」という視点で音楽を横断することで、これまでとはまったく違う楽しみ方ができるようになりました。

今年で50歳の私。いつの間にか「最近の音楽」に対して、保守的で偏屈な態度をとるようになっていました。思春期に夢中になったロックやサブカルチャーを神格化し、「昔のほうが質が高かった」「最近の曲はどれも同じだ」と決めつける。厄介なことに「テレビで流れない音楽を知っているほうがイケている」という、選民意識までこじらせていました。

でも、いざちゃんと聴いてみると、最近のヒット曲はどれも驚くほど完成度が高い。Vaundy、藤井風、米津玄師、Mrs.GREEN APPLE――大衆に支持されながらも、音楽的な深みや新しさをしっかり持っていて、聴くたびにハッとする発見があります。過去へのリスペクトと、今の時代ならではの表現が同時に存在している。その面白さに、すっかり夢中になりました。

CDを減らしたことで、「持っているものの中から選ぶ」という制限がなくなり、音楽はもっと自由になりました。気がつけば、今が人生でいちばん音楽を楽しめていると感じています。

※本稿は、『小さく暮らす: 25平方メートルのゆたかな生活』(新潮社)の一部を再編集したものです。

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『小さく暮らす: 25平方メートルのゆたかな生活』(著:大木奈ハル子/新潮社)

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