ここまで進んだ!アルツハイマー病最新治療

「若年性アルツハイマー型認知症です」。60歳の藤島岳彦さんが医師から告げられたのは4年前のことです。

もともと、営業職の会社員として忙しい日々を送っていた藤島さんは、数ヶ月前から自身に異変を感じていました。ある日突然、毎日結んでいたはずのネクタイの結び方が分からなくなったというのです。

次第に、その異変は大きくなっていき、仕事にも影響が出るようになりました。研修中に何を学んでいるのか分からなくなったり、取引先とのアポイントの時間を間違えたり…。

藤島さんは最終的に仕事を辞めざるをえなくなり、病院を受診したところ、「認知症」だと診断されたのです。

これからも子供や孫との時間を過ごしたい。やってみたいこと、見てみたい景色、まだ残されていることがたくさんある。

診断を受けた日、病気と闘うためにできることは何でもしようと、決意を固めたといいます。

自分を奮い立たせるために、これまでやったことのなかったフルマラソンにも挑戦してきました。

藤島岳彦さん
「診断前は、できない自分へのがっかりした思いがありました。病気なんだなということが分かってストンと腹落ちしたんです。そっか、病気だったんだな、俺のせいじゃないと。自分としては、もうそこからは泣いていられないというふうに思えたんですね。アルツハイマー病は手強い相手だと思うけど、とことん付き合って治したいですね」。

 

(画像提供:NHK)

 

藤島さんは、「ドナネマブ」という2年前に承認されたばかりの新薬による治療を、東京都健康長寿医療センターで第一号の患者として受けることになりました。1年半にわたり、月に1回1時間程度、点滴で投与を受けてきました。

ドナネマブは、2023年承認のレカネマブという薬と共に、専門的には「抗アミロイド抗体薬」と呼ばれています。抗アミロイド抗体薬は、アルツハイマー病で脳内に蓄積する「アミロイドβ」と「タウ」という異常なタンパク質のうち、最初にたまり始める「アミロイドβ」を取り除く薬です。病気が重度になるまでの期間を平均3年遅らせることができるという試算もあります。年齢制限はありませんが、軽度認知障害(MCI)と認知症の初期段階の患者が対象です。

藤島さんの脳内のアミロイドβも大幅に減少していることが確認されました。番組では、藤島さんの治療に密着し、経過を詳しくお伝えします。

藤島さんの主治医で、これらの薬の効果を研究している井原涼子さんは、この新薬の登場はアルツハイマー病治療の現場に大きな変化をもたらしているといいます。

 

井原涼子さん(画像提供:NHK)

 

東京都健康長寿医療センター 臨床開発ユニット長 井原涼子さん
「抗アミロイドβ抗体薬は2000年代後半からずっと治験が行われてきてようやく世に出てきたところです。もともと医療現場で使われていた薬は、神経細胞の働きを少しだけ持ち上げてあげるものですが、新薬は“進行を遅らせることができる”点が画期的だと思います。一人で生活できる時間を延ばしたり、あるいはご家族に介護が必要になるまでの時間を延ばしたりする意義がある薬だと思っています。」