*

 

「記録5」

 

 休みを取って剣人たちが万博に行ってきた。

 行くまでは半信半疑な様子だったが、三人ともすっかり夢中になって帰ってきた。

「霧さん。万博マジでヤバかった。大屋根リング、めっちゃデカくて」

 剣人が興奮して大声でまくしたてる。

「そうか、よかったな」

「よかったなんてもんやないんです。めっちゃ人多くて並んだけどめっちゃ楽しかった」

 瀬良も眼を輝かせて話しはじめた。すっかり化粧は落ちて髪は乱れている。どれだけ遊び回ったのだろう、とおかしくなった。

 優人はほとんど自分の身体と代わらないほど巨大な「ミャクミャク」のぬいぐるみを抱きしめている。

「優人、よかったな。大きいの買ってもらったんだな」

「霧さん、違うねん。これ、僕が当ててん。一等やねん」

 得意そうにぬいぐるみを抱きしめた。

「くじ?」

「ミャクミャクくじ、言うのがあるんですよ。一時間並んでくじ引いて、優人が一等当てたんです」

「一時間? すごい人気だな」

「霧さんも絶対行くべきや。木綿子さん誘て行ってきはったらええねん」

 剣人が力強く言うと、すぐに瀬良もうなずいた。

「うちら、もう一回行きたいと思てて。あれ、一回で回りきるの無理です」

「そんなにか」

 二人で万博に行くことを考えなかったわけではないが、介護のある木綿子に無理をさせるのは避けていた。だが、よく考えれば、俺の人生では最後の万博になる。もし、次に大阪で開催されることがあったとしても俺も木綿子も生きてはいない。

 迷った末、木綿子に電話を掛けた。

「万博に行きませんか。この前、剣人たちが行ってきて、すごくよかったと言ってるんだ。帰ってきてからはその話ばかりで」

 なんだか妙に改まった口調になってしまった。