私は28歳のとき、初めて池袋のサンシャイン劇場でコンサートを開催。夢だった「ボン・ヴォワヤージュ」を歌いました。
そうしたら客席にいらした美輪さんが、「ブラボー!」と大きな声をかけて、席から立ち上がってくださったんです。私は感動のあまり、その場で泣いてしまい――これからも歌を続けようと心に誓いました。
もちろん、ダメ出しもたくさん。私が商業演劇に出ると、あそこはこうしたほうがいいと、きちっと指摘してくださる。それが本当に的確なので、翌日から直したりしていました。
個人的な相談もずいぶんしました。私が失恋したり、恋人ができないと嘆いたら、「自然体のまま受け入れてほしいなんて傲慢!」と叱られまして。
好きな人の前では美しい演技をしなければダメだし、そのためには我慢も必要と諭されました。「暗いブスは漬物石にもならないわよ」と、ブラックユーモアを炸裂させて、落ち込む私を笑わせてくれました。
そういえば、美輪さんと同じメイクを私にしてくれたことがありました。さらにワンピースとハイヒールもくださって、そのままうちまで帰りなさいと言われたけれど、電車に乗るのはちょっと……と躊躇。ハイヒールは脱いで手に持って帰りました。
テレビ出演も見てくださっているようで、すぐに電話をかけてきて感想を述べてくれるのです。あるドキュメンタリー番組で、私が劇団員をすごく怒っているシーンを見て、「頭ごなしに怒っちゃダメ。心は熱く、頭は冷たく、冷静に」と、強く叱られました。
「私が一番大事にしているのは、『ただただ愛しなさい』ということ。見返りを求めてはダメ。劇団員に対しても、ただ愛するだけでいいんだ」と。
それ以来、怒りで我慢ならないときや冷静さを失いかけたとき、いつも頭の中で響くのは、美輪さんの「心は熱く、頭は冷たく」という声。そんな、優しいけれど怖くて厳しい美輪さんがもういない、と思うと本当に淋しいです。