もうひとつ、とても大事なのが、戦争の話です。実際に軍国主義の時代や長崎の原爆投下を経験した美輪さんのお話は本当に貴重でしたし、私のものの考え方、そして芝居を作っていくうえでの基礎を築いてくれました。

というのも、私の祖父は軍人だったので、山形にいたときはまわりに軍人を悪く言う人はいなかったんです。でも、軍国主義によって何が起きたのか、美輪さんのお話を聞き、自分でも本を読んだり長崎で戦没者慰霊碑を訪れるなどして勉強しました。私が今も平和運動を続けているのは、美輪さんのおかげです。

体調を崩していらっしゃると聞いたとき、「会いに行ってもいいですか?」とご連絡したのですが、断られました。今思えば、具合が悪い姿を見られたくなかったのかなと思います。

昨年、電話でお話しした際には、「あなたも運動して、足腰が弱らないようにしなさい」と言われました。それが最後のやりとりになりました。

美輪さんが亡くなってから、いろいろな言葉が蘇り、本当に多くのことを教えてくださったんだとつくづく思います。訃報とともに、美輪さんが生前に綴った直筆メッセージが発表されましたね。「愛があれば戦争なんか起こりません」。

今、世の中がどんどんおかしな方向に向かい、日本も戦争ができる国になろうとしているのではないか。それを美輪さんは何より危惧していただろうし、死してなお、そのことを発信しようとなさっていた。ですから、その遺志を継いでいきたいと思います。

7月末に沖縄で「愛と平和」をテーマにライブを行いますが、主催者から「ヨイトマケの唄」を歌ってほしいと依頼がありました。訃報の前の話ですが、美輪さんが私の背中を押してくれたのではないか、と感じましたね。きっとこれからも美輪さんは、私のなかに生き続けると思います。

 

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美輪明宏さんの本

小誌では、美輪さんに、数々のインタビューや対談企画にご登場いただいたほか、華やかに表紙を飾っていただきました。被爆や差別などの辛苦を経験しながらも、つねに人の悲しみや苦しみに寄り添い、前向きな言葉で励ましてくださいました。

最期まで美意識を貫き、愛と平和の大切さを説いてくださった美輪さんの、厳しくも愛にあふれる言葉が詰まった単行本をご紹介します。連載エッセイ(第60回まで継続予定)もあわせてお読みください。

『あなたの人生を導く 美輪ことば』1760円
「微笑みは開運の鍵」「思いやり」「感謝は自分にも」「地獄、極楽は胸三寸にあり」「ごきげんよう」……。美輪さん自身がずっと大切にしてきた「言葉」と「自筆の書」が満載。勇気と希望を与えてくれる人生指南。本誌の連載をまとめた貴重なエッセイをお手元に

 

『幸せの大盤振る舞い』1980円
「波瀾万丈の人生を送っている私ですら、前を向いて生きていけるんですよ」。戦争や病、偏見に負けず、信念を貫いてきた“闘う麗人”が贈る幸せのメッセージ。幸田文氏との対談、随筆「素顔の三島由紀夫氏」など貴重な記事も収載した贅沢な一冊

※いずれも小社刊。価格はともに税込