私は出産も子育ても経験していませんが、撮影期間は赤ん坊役の子と一緒でした。背負っていると背中に、その重みや体温が命として伝わってきて、母である文美子の気持ちが自然に湧いてきたように感じました。

琴子役を演じたのは、小八重葵美(こやえあみ)さん。まなざしがすごく強くて、たじろいでしまう瞬間があるというか。「あぁ、私は大人側の人間なんだな」と感じさせられましたし、無垢な子どもの感覚の強さや鋭さがまぶしかったです。

監督は、戦争当時のことを子どもたちに丁寧に伝えていらっしゃいました。戦争を初めて知った子たちの顔つきや雰囲気がどんどん変わっていって。「追体験しながら全身であの時代を生きて、演技に落とし込んでいるんだろうな」と感じました。

琴子には、次々と災難が降りかかってきます。胸がしめつけられる瞬間が多く、撮影現場で抱きしめてあげたいと思いましたが、邪魔してはいけないと、一定の距離を取っていました。撮影終盤、琴子と一緒の場面を撮り終えた後、やっと彼女を抱きしめることができて、涙が止まらなくなりました。

現実の戦争では、子どもも大人も、戦意高揚のプロパガンダによって感情が動かされていった。映画もメディアもそういう使われ方をしてきたわけです。

だからこそ、戦後81年を迎えた今、私は戦争の当事者ではないけれど、「当事者を知る当事者」として、やはり戦争のない世界をあきらめたくない。映画に携わる者として、こういう作品に参加して、伝えていかなくてはいけないと感じています。