吉永 だから私は、相手を傷つけないようにして徐々に距離を取るようにしているの。ある時期は大事な人だったわけだからね。人間は生ものだから、お互いに少しずつ変わるもの。その中で違和感を抱くようになるのは仕方のないことだよ。だから熊に出会った時みたいにじっと見つめ、愛を込めて少しずつ後ずさりするような感じで……。

倍賞 目をそらさずに、そろ~っと離れる(笑)。それ、正解だと思う。

吉永 ある時、急に気づいちゃうこともあるね。仲良くしていたつもりだったけど、「この人といったい何をしゃべってきたんだっけ」とか、「私、もしかするとこの人のことを何も知らないな」とか。夫婦でもそういうことあるのかもしれないね。

倍賞 ウフフフフ。

吉永 なに、その反応。(笑)

倍賞 その人の人間性を垣間見たことで、距離を置きたくなる場合もある。一緒に仕事をしていた人が、陰で人を上から目線で怒鳴りつけているのを聞いちゃったことがあって。心優しい人だと思っていただけによけいショックで、気持ちがすーっと引いていった。

吉永 私も旅先で、友達がちょっとしたことで旅館の人を怒鳴りつけたことにショックを覚えた経験がある。友達って、どんどん近づきたくなるけれど、近づいたがゆえに見なくていいものを見てしまうことがあるよね。それまで気づかなかった人間性が見えたり。人間って、ある程度の距離感は必要だなとしみじみ思う。だから、距離感すら意識しなくても心地良い関係でいられる人は本当に貴重。

倍賞 それに友達って、ある時期わーっと増えても、年齢とともに減っていくこともあるよね。親しくしていたゴルフ仲間も、世話役をやってくれる人たちが歳をとって、一人減り、二人減り……。でも一緒にいてラクでいられる人は、ちゃんと残っていくんじゃないかな。私にとって、みっちゃんはそういう人。そのことは受け止めておいてね。(笑)

後編はこちら