研究者の体験談

この研究は、ハウス食品でレトルトカレーの製造中に発生した謎の現象がきっかけで生まれた。

レトルトカレーの製造では、タマネギとニンニクを混ぜて炒める工程がある。普通はよく炒めると美味しそうなキツネ色に仕上がるところ、ある時、不思議なことに青々とした色になってしまったことがあった。この時は残念ながら、何百キロものタマネギとニンニクを捨てざるを得なかったそうだ。

この現象が起きた理由を探り再発を防ぐために、タマネギの研究を始めた。今井博士は当時をこう振り返る。

「始めた頃は、まだ遺伝子に関する研究をしたことがなかったので、実験の手引書(初級編)を頼りに手探りで行ったことを今でも覚えています。また、たくさんのタマネギを切って実験していたので、作業着がタマネギ臭くなってしまい、洗っても落ちなくなりました。特に、洗濯後にアイロンをかけると部屋中にタマネギ臭が充満するため、家庭では不評というより、ちゃんと仕事しているのかと心配されました」

研究打ち切りの危機も乗り越えてやっとの思いでまとめた研究成果は、著名な学術誌の『Nature』に掲載された。

イグノーベル賞の授賞式で今井博士は、タマネギによって泣かされたすべての人、そして人間に食べられたすべてのタマネギにも感謝の意を伝えた。

※本稿は、『ヘンな科学:“イグノーベル賞”研究42講』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

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