(『いろはの恋は時代をかける』/(c)TBS)
上白石萌音主演の火曜ドラマ『いろはの恋は時代をかける』(TBS系、毎週火曜午後10時~)。令和を生きる小学校教師に、江戸娘の魂がタイムスリップするストーリー。ロマンティックコメディでありながら、現代の教育や教師の苦悩に踏み込んだ骨太な内容に注目が高まっている。放送コラムニストの高堀冬彦氏が解説する。

異色の設定が可能に

TBS『いろはの恋は時代をかける』(火曜午後10時~)は、上白石萌音(28)が主演するタイムスリップ劇である。タイムスリップを題材にしたドラマは過去にも数多くあったが、この作品は従来のものとは趣がかなり異なる。

同じTBSのドラマ『JIN-仁-』(2009年など)や同じくTBSの『不適切にもほどがある!』(2024年)など、大半のタイムスリップ劇は、主人公自身が過去や未来へ行った。この作品は違う。江戸中期に暮らしていた町娘の魂が、現代の小学校教師に憑依する。これにより、「町娘が教師になる」という異色の設定が可能になった。

憑依される教師は梨木彩葉(上白石)。乗り移るのは飛脚屋の娘・いろは(上白石の二役)である。彩葉は東京の渋谷第三小学校で3年3組を受け持っていた。優秀で真面目だが、精神的にもろい面がある。前任校では、メンタルの不調から1年間休職した。

現代の教師の仕事は過酷なのだ。児童は家庭で甘やかされているため、なかなか言うことを聞いてくれない。かといって厳しく指導すれば、保護者が黙ってはいない。ただでさえ保護者からの要望やクレームは絶えない。文部科学省の2024年度の調査によると、メンタルの不調で休職した公立学校の教師は7087人に上った。

彩葉は、自分勝手な保護者に面談の日時を何度も変更されたことで、心労から倒れてしまう。1人の保護者が面談の日時を変更すれば、その影響で全体のスケジュールも組み直さなければならない。教師にとっては、大きな負担となる。

それでも、周囲の教師によるサポートや働きかけはほとんどない。誰もが自分の業務で精いっぱいなのだ。彩葉は倒れた際も保健室で休むだけ。そして、「今度は迷惑掛けませんから」と力なくつぶやく。もう休職はできないと思っていた。