ペットボトルの蓋が開かなくなった。ペットボトル本体のプラスチックが薄くなったせいだとずっと思っていたけれど、どうやらこちらの握力が落ちたせいらしい。

「そういうときは、蓋を回そうとしないで、ボトルのほうを回すように力を入れれば開くわよ」

同い年の友だちに教えられ、なるほどテコの原理かと納得して実行していたが、最近はそうやったところで、どうにも開かない。近くに若者がいると即座に「開けて」と頼む。彼らはいとも簡単に開けてみせる。若さを見せつけられた気分になる。「開けて」と頼んだのは自分なのに。

指先も老化するようだ。握力のみならず、指の動きが鈍くなったことを思い知る。繊細な鎖のついたネックレスを首に巻き、首の後ろでホックを留めようとするが、小さな隙間にホックの先を入れることがどうしてもできない。押さえているバネの部分がすぐに指からはずれてやり直し。

「ええい、もう。ネックレスなんかしないぞ!」

ヤケを起こして放置することが増えた。

洗顔をするとき、顔にクレンジングフォームの泡をつけ、フェイスブラシで汚れを落とす。が、最近、その方法で顔にブラシをかけながら、そろそろ水で流そうと思うとき、なぜか目を閉じたまま、コップに手を伸ばし、水を満たす。いやいや、今、うがいをするところではないぞ。我ながら呆れる。が、その間違いをこのところ立て続けに三回繰り返した。どうも私の脳は、右手にブラシを持つと、「それは歯ブラシだ」と判断し、「次は水を用意しよう」と思うらしい。無意識に実行していた回路が壊れかけている。こわっ。

こういう小さな老化が少しずつ、じわじわと我が身に忍び寄り、いずれ外部にも明確に「コイツ、ボケたな」とわかる日が訪れるのであろう。父ほど老人の境地に至っているつもりはなかったが、私もここで一応、宣言しておこう。

「アガワの文章、明らかに壊れているぞ、と思ったら、遠慮なくお知らせください!」

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