80歳を過ぎた今も台所に立ち、娘の好きな物を作ってやれる私は幸せです…(写真:stock.adobe.com)
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母と娘の距離感

「今日、夕飯食べに行くね」と、娘からLINEが入りました。それを見た私は、すぐスーパーへ買い物に。

肉と野菜・果物コーナーを眺め、今夜のメニューはすき焼き風の煮物、マカロニサラダ、食後の果物をりんごにすると決めました。80歳を過ぎた今も台所に立ち、娘の好きな物を作ってやれる私は幸せです。

目の前で、グツグツと美味しそうに煮こまれていくジャガイモやニンジン。菜箸を手にして、煮物に目をやると、まだ子どもが小さかった頃、台所に立っていた自分の姿を思い出します。

料理の最中、換気扇から外の道に漂う匂いをかぎつけた、近所に住む私の友だちが、よく勝手口から家に入ってきました。「ちょっと味見させて」とつまみ食いし、そのままおしゃべり。楽しかったな。

当時は、クリーニング屋さんが家まで集配にきてくださっていた時代でした。店主から、「女房も自分と同じ仕事をしているわが家では、煮物の匂いなんてしてきたことがありません。奥さんは料理に専念できて幸せですね」と言われて、ただ笑っていたのを覚えています。

思い出に浸っていると、娘がやってきました。「わあ、いい匂いだね」と娘。「煮物がちょうど食べ頃だ。さすがお母さん」と食卓に座るが早いか、口の中に放り込んでパクパク。それから一緒に食べて、おしゃべりして、二人で顔を見合わせて大笑いです。

夫を亡くして8年、一人暮らしを望んだ私は団地に引っ越しました。自由にさせてもらっていることに、とても感謝しています。

それでも娘としては、82歳になった老婆が心配なのでしょう。帰る際、必ず「ゆっくり行動すること。あせらないこと。転ばないよう、前を見て歩くこと」と声をかけてくれるのです。そして私はその都度、この言葉を胸に刻んでいます。

帰る娘もそうですが、実は見送る私も心の中で、娘のことが心配。そんな距離感がちょうどいいのです。またいつでもごはんを食べに来てね。ありがとう。

 


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