冗談じゃないまだ拾い手はある

私は家では、料理、掃除、洗濯、いっさいやりません。全部、亭主がやります。私が高齢だからというのではなくて、一緒になったときからそう。あの人はマネージャーでもあるから、「芸人・内海桂子」を家でも大事にしてくれてるんだろうと思います。そこはすっかり甘えさせてもらうかわり、食事についてはいっさい文句を言わない。出されたものを食べます。

ただね、「そういえば冷蔵庫の中に、あれがあったわね」と聞くと、「あれはもうありません」なんて答えが返ってくるときがあるんですよ。あの人、捨てるのが好きなのね。私は「捨てる」という言葉が嫌い。「もう必要ない」「無駄なもの」として切り捨てる感じでしょ。

私のこともイヤになったら捨てるんじゃないかと……。「私を捨てたきゃ、早く捨てなさいよ。拾い手のあるうちにね」と言うと、ニヤニヤ笑ってるから、「冗談じゃない。まだ拾い手はあります!」と言ってやるんです。(笑)

拾い手があるかどうかはともかく、芸人としては今も現役。浅草の東洋館に月に7、8回出演するほか、お呼びが掛かればほかの場所にも出向きます。休みは週に2日くらいでしょうか。それでも昔の忙しさに比べたらヒマで、何だか遊んでるみたいに思えます。何しろ10歳で蕎麦屋に奉公に入って、16歳で漫才師になり、この年まで80年以上、休むことなくずっと働き続けてきましたから。

48年も一緒に漫才をしていた相方の好江さんが16年前に亡くなってからは、舞台には一人で立っています。三味線を弾きながら自作の都々逸を披露したり、ひとり語りをしたり。お客さんとの掛け合いも楽しい。長年、通ってくださっている昔なじみのお客さんもたくさんいます。といっても、皆さん、私より先に逝く人が多いけど。(笑)

皆さんからは「90過ぎて頑張ってるね」と言われます。でも、ヨボヨボで、ただ舞台に立っているだけという状態ならば、「やめて、もう家に帰って寝ちゃえば」となる。自分で「私は芸人です」と言うからには、それだけのものを持っていなくちゃいけません。

私は新しいネタも見せたいから、都々逸の新作もどんどん書くし、ひとり語りやお客さんとの掛け合いも、今の世相を取り入れて皮肉を効かせたりしています。

芸人として、年寄りのばあさん扱いはされたくない。それが私の張り合いになっているんです。