101歳の長寿を全うした生活評論家、吉沢久子さんが日々の生活のなかで見つけた「幸せに生きる方法」「暮らしのアイデア」「簡単に作れるおいしい料理」は今の時代を生きる上でもヒントがいっぱい。エッセイ集『100歳の100の知恵』(中央公論新社)から吉沢さんの極意を1つずつ紹介します。

<100歳の100の知恵 1>

『とっておきの食器は自分のために使いたい』

私は器が好きで、若い頃から気に入ったものを集めていました。なかには作家ものの陶器や漆器など高価なものもあり、特別なときのため大事にしまっていました。

でも、あるときふっと、思ったのです。あと何回、お気に入りの食器で料理をいただけるだろうか、と。私はしまいこんでいた食器をすべて出してきて、ふだん使いすることにしました。

万が一、割れても、モノには寿命があると思えばいいのです。それより、使わないまま眠っていることのほうが、よほどもったいない。そんなふうに考えが変わりました。

気に入った器に、好きなおかずを盛って食卓に置くと、それだけで食べなれたものもいっそうおいしく感じられます。それに器を手に入れたときの情景もふっと蘇ったりして、楽しいのです。

器ひとつで、たとえささやかな食事でも、贅沢な時間になります。残りの時間、好きなものに囲まれて、豊かな気持ちで過ごしたいと思います。
【関連記事】
草笛光子「『少々わがままだったけど面白い女優だったね』と言われたい」
作家・佐藤愛子「気がつけば、96歳。もうこれでおしまい」
内館牧子×三田佳子 残り時間、待ったなし。「すぐ死ぬんだから」どう生きる?
吉沢久子さんの連載「100歳の100の知恵」一覧