古関正裕さん2歳の頃、母・金子さんのひざに抱かれ、父・裕而さんのピアノで歌う
〈今日から朝ドラ『エール』が再開!〉1964年の東京五輪で選手を奮い立たせた「オリンピック・マーチ」、高校野球のシンボルである「栄冠は君に輝く」、早稲田大学の応援歌「紺碧の空」──。5000曲もの作品を世に送り出した作曲家の古関裕而(こせきゆうじ)さんと、彼を支えた妻・金子(きんこ)さんをモデルにしたドラマ『エール』。偉大なる作曲家と声楽家を目指した妻の長男である古関正裕さんが、在りし日の両親について語ってくれた(構成=内山靖子 撮影=本社写真部 写真提供=古関正裕さん)

両親のラブレターが朝ドラになった理由

今期のNHKの朝ドラとして、『エール』が放映されています。両親の生涯がドラマになったのは、2人が若い頃に交わしていた手紙を、僕が読んだことがきっかけです。2009年に、父の生誕100周年を迎えるにあたり、父に関する資料を整理しておこうと考えました。そのときに初めて、結婚前に両親がやりとりしていた手紙の文面をきちんと読んだのです。

それまでも、手紙があることは知っていました。でも、「死後開封のこと」と書かれた袋に保管されていたので、1989年に父が亡くなった後もずっとそのままで。それをあらためて時系列に整理して読んでみたら、まあ、ビックリ。想像はしていましたけど、実に情熱的なラブレターだったわけですよ。出会って結婚するまでのわずか3~4ヵ月の間に、2人が交わした手紙はおそらく百数十通。父は福島、母は愛知の豊橋に住んでいたので、届くまでに2日ほどかかったはずですが、最後のほうは日に何通も書いている。

文面を読んでいると、文通だけで2人の気持ちが燃え上がり、お互いの恋愛感情がどんどん高まっていくのがよくわかる。ある意味、普遍的なラブストーリーと言える内容だったので、この手紙をもとに小説にしたら面白いんじゃないかと思ったのです。

それで父の生誕100周年のタイミングで出版しようと、『君はるか 古関裕而と金子の恋』という本を書き始めました。結局、100周年には間に合わなかったんですけど(笑)、そのゲラを父の故郷である福島の方々に読んでもらったところ、「ぜひ、朝ドラに!」と。その話を母の故郷の豊橋の方にも伝えたら、「うちも応援します!」と盛り上がって。それで、福島市と豊橋市の市長さんが一緒に、この企画をNHKに持ち込んだというわけなんです。