神足裕司さん(左)と西原理恵子さん(右)
2011年9月、コラムニストの神足裕司さんは移動中の飛行機のなかでくも膜下出血を発症。当初は生死も危ぶまれたものの奇跡的に一命をとりとめました。失語症、左半身不随などの後遺症で「要介護5」となるも、執筆活動を再開。要介護者の立場から発信を続けています。神足さんの最新著書『コータリン&サイバラの介護の絵本』(文藝春秋)では、あのコンビも復活してーー

あのコンビが介護と向き合う

『コータリン&サイバラの介護の絵本』は、老人ホーム検索サイト「みんなの介護」で、2017年から続く連載「コータリさんからの手紙」を単行本化したもの。要介護生活を送る神足さんが、在宅介護やデイサービスの実際、車いすや福祉車両、自動排泄処理装置などの使い心地、介護スタッフとのコミュニケ―ションや家族への思いなどを綴っています。

イラストを描いているのは、1990年代に『週刊朝日』の大人気連載『恨ミシュラン』で神足さんとタッグを組んでいた漫画家の西原理恵子さん。神足さんの文章に対して西原さんが繰り出す絶妙なコメント&イラストに笑ってしまう一方で、ふだんはあまり聞くことのできない「介護される側」の本音には、さまざま考えさせられます。

そして、当初は寝たきりの状態だった神足さんを、家族が一丸となって在宅介護をはじめさまざまな制度を利用して支え続けるなか、「できる」ことが少しずつ増えていく様子に、希望を感じる1冊でもあります。
著者の許可を得て、収録されているなかから数編をお届けします。

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息子が結婚!

息子が結婚した。30歳。ボクが倒れたのが息子が23歳の時だった。

ごく普通の若者だったのに、ボクが倒れてまもなく、彼の肩に重く介護という現実がのしかかった。「だめかもしれない」宣告、手術をするかどうかの決断、移転先のリハビリ病院を探したり、家のローン…。母親の片腕として懸命にやってくれた。

仕事もしながらボクの世話。「大変だった」なんてもんじゃないだろう。それでも「高校生の妹は僕が面倒みるから」。そう言い放った。火の車だった家計のために「付け焼き刃かもしれないけれど」とスポーツクラブも大好きな本を買うのも止めた。

仕事も忙しく、彼女とも付き合っていけるか不安になったそうだ。けれど彼は頑張ってくれた。いつの間に学んだのか、マッサージもかなりの腕前になっていて、固まった足や体をさすってくれた。オムツ替えもお風呂も完璧にこなした。仕事を抱えた彼は大変だったというもんじゃないだろう。

そんな中、妻になってくれた彼女も資格取得のため頑張っていたと聞く。そして、めでたく大学時代からの彼女と9月に結婚した。早く結婚してほしいと願っていた。ようやくその日がやってきたのだ。

「いままでありがとう」。その言葉に尽きる。何回言っても言い足りない。そして息子を見守ってくれている彼女にも感謝している。こんなに優しい2人なのだからきっと幸せになると思う。なってほしい。この秋は我が家も新しい生活がじはじまった。
(2017年10月30日)