相棒(バディ)・サイバラのことについて

サイバラのことを書いてほしいと言われた。

初めて会ったのは『週刊朝日』で「恨ミシュラン」と言う連載を始めたときだ。美大を卒業して数年で、すぐ噛みつかれそうな鋭さの中に、きらっきらっした目を持つ人だった。ひと目で只者じゃないとわかった。「恨ミシュラン」はレストランやバーを巡り、ミシュランガイドさながらのジャッジをする。恨み度を最高5点で評価し、サイバラの顔マークとボクの顔マークが5個そろったら最悪ということ。「まずい」とか「店員の態度が悪い」とか言いたい放題だが、もちろん良いときは褒める。おもしろい仕事だった。強くて弱いサイバラはぐんぐん成長していった。彼女と最後はけんかもした。

彼女は実家の借金を背負ったり、大学の学費を稼ぐために、いろいろなことをしてきた。めちゃくちゃにみえる彼女の、ちらっとみせる優しさが実は心にずしっと来たりしていた。今でも食事にいくと、隣に座って世話を焼いてくれる。上海蟹の身をほじって食べさせてくれる。「めちゃくちゃやっていたのに、家族に『パパ』って言われてるのずるくない? 」だそうである。

サイバラは今、相思相愛のパートナーがいて人生最高に幸せそうだ。サイバラは高須克弥先生の介護はしないと断言している。老人ホームなり、病院なり、専門家に任せた方が良い。家族は「花持ってきたよー」と笑顔でいた方が良いと。けれど、サイバラのことだ、横に座ってお茶づけを食べさせてあげてるに違いない。
(2018年8月15日)