人の目はある程度意識したほうが得策
内館 私はあえてハナに「人間は外見」と言わせました。ところが「見た目が大切」と声高に言うことは、これまでタブー視されていた気もします。「人を外見で判断してはいけない」とか「人間は中身」とも言いますし。それも確かに一理ありますが、やはりできる範囲で死ぬまで外見に手をかけようという意識は、重要な中身のひとつだと思います。
三田 外見というのは、結局は意識の表れですものね。
内館 そう思います。“ナチュラル”という言葉を都合よく使う方もいますが、歳をとってからのナチュラルは、無精に通じる場合もありますから。
三田 おしゃれをすることで元気になるし、自信もつきます。それに、老人になって身だしなみにかまわないと、人に不快感を与えかねません。ですから自分のためだけではなく、人のためにも、ある程度がんばったほうがいい。
内館 若い人から憧れられるような存在になるのが理想ですよね。
三田 そういえば孫がまだ小さい頃、私が茶色っぽいパジャマを着ていたら、「ばぁば、僕がいる時はこのパジャマを着ないで」って。
内館 わっ、かわいい!
三田 スッピンでくすんだ色のパジャマを着ていると、孫にとって素敵なばぁばではなくなってしまい、がっかりするんでしょうね。あぁ、小さい子どもでもちゃんと見ているんだと気づかされました。
内館 ましてや大人は、もっと怖いですから。
三田 郵便物を取りに行くだけだからと、スッピンで部屋着のままマンションの1階に降りていったら、「三田さんですよね」と声をかけられて……。一瞬、見てはいけないものを見てしまった、という表情をされたことがあります(笑)。玄関から一歩外に出たら人の目があると思わなくてはいけない、と反省しました。
内館 私はこの本にサインをする時は、「他人の眼が若さをつくる」と書くんです。やはり人目を意識することは大事ですね。
三田 私たち女優という仕事は、常に他人の目が注がれているわけです。その目があることで鼓舞され、「もっとちゃんとしなければ」という力を得ている気がします。
内館 若作りをしすぎても、人から見たら「痛い」と映る。どう思われようと、着たいものを着たらいいと考える方もいるようですが、やはり人目は「痛い」方向への抑止力になりますよね。
三田 かといって、いつも同じようなものを着ていると、つまらない。もう一押ししてちょっぴり冒険するのが、センスの見せどころかなと思います。