『ブリング・ミー・ホーム』撮影中の一コマ。中央にヨンエさん。眼鏡の男性がキム・スンウ監督(©2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved)

社会によい影響を与える作品に出たい

今回私は、『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』という映画で主演させていただきました。私が演じるのは、6年前に失踪した息子を捜す母親・ジョンヨン。彼女は看護師として働きながら、夫とともに息子の行方を捜し続けています。ある日、ジョンヨンのもとに「息子に似た子どもを郊外の漁村で見た」という情報が寄せられて――という、胸が苦しくなるようなサスペンスストーリーです。

子どもの失踪というのは、私たちがずっと関心を持っていかなければいけない重大な事件です。わが子の生死が不明の状況で、何十年も子どもを捜し続ける人がいる。そのつらさは一体どれほどのものか……。それを多くの人に知ってほしいという思いが、この作品を選んだ理由の一つになっています。

役者であれば、誰もが「次は新しいタイプのキャラクターを演じてみたい」「今まで経験したことのないジャンルの作品に出たい」と思うものです。私にも、一つのイメージ、一つのジャンルに固執せず、幅広い役を演じていきたいという欲がありました。

けれどその一方で、結婚と出産を機に、大きく意識が変わった部分もあって。それは「たくさんの人に観てもらうことがすべてではない。それよりも、社会によい影響を与える作品に出たい」と思うようになったことです。具体的には、あたたかい社会を作るための一助になるような作品、さらには子どもたちの未来を明るく照らすきっかけとなるような作品ですね。

そして素晴らしい監督や共演者と一緒に仕事をしたいという気持ちに加え、「せっかくなら意義のある、心あたたまるメッセージを届けられる作品を選びたい」と考えるようになったのです。

そんな時に出会ったのが、キム・スンウ監督が手がけた今回の脚本でした。読んでいて胸が苦しくなることもありましたが、それでもこの映画に出演しようと思ったのは、最後に一筋の希望が見えると思ったから。現実は時にフィクションよりも過酷で、つらいこともたくさん起こります。今のコロナ禍もそうだと思います。でも、懸命に目を凝らせば、希望の光が見えてくるはず。そんなメッセージを届けたいと思ったのです。