8年間、田園生活を送っていました
こうして『婦人公論』にインタビューしていただくのは、2005年以来だそうです。時が経つのは本当に早いですね。前回お目にかかったのは、確かドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』への出演を経て、映画『親切なクムジャさん』が公開された頃だったと思います。
私は、これまでたくさんの映画やドラマに出演してきましたが、なかでも印象深いのは、やはり日本でもたくさんの人にご覧いただいた『チャングム』でしょうか。この作品からは、役者としての成熟はもちろん、人との接し方を学ぶなど、人格の面でも成長する機会をもらいました。自分の人生を振り返った時に、このドラマへの出演が転機の一つになったことは間違いないと思います。
私は09年に38歳で結婚し、11年に男女の双子を出産しました。母親になったのが遅かったこともあってか、子どもたちのことが何より大切で――。彼らが幼いうちは育児と家庭生活に専念しようと、8年ほど役者業から遠ざかり、ソウルから少し離れた場所でのんびりと田園生活を送っていました。
よく「これほど長いあいだ仕事を休むことについて、不安や焦りはありませんでしたか?」と聞かれますが、それはまったく感じませんでした。私は役者として、20代、30代を精一杯生きてきました。ソン・ガンホさん、イ・ビョンホンさんと共演した映画『JSA』ではスイス人将校を、『親切なクムジャさん』では復讐に燃える女性を演じるなど、幅広い役柄に挑戦。おかげでたくさんの人に愛していただき、悔いのない時間を過ごせました。その素晴らしい時間があったからこそ、40代は家族のために生きようと思えたのです。
とはいえその間も、役者としてまったく活動していなかったわけではありません。17年には、ドラマ『師任堂、色の日記』に出演。ほかにもドキュメンタリー『イ・ヨンエの晩餐』や、『下の家』という短編のインディーズ映画などに出演しています。
一人の母、そして妻として過ごした8年の間に、私はたくさんの“初めて”を経験しました。時間が経つのを忘れるくらい毎日が新鮮で充実していて、振り返ってみても楽しい思い出しかありません。子どもたちもだいぶ手が離れてきましたので、これからは仕事と家庭を両立させながら、また役者として邁進していきたいと思っています。