高齢になったら、郷里までわざわざお参りに行くのが大変。不便な場所にお墓を遺して、子どもに迷惑をかけたくない──。50代、60代になると、お墓の悩みを抱える人は少なくありません。遠方のお墓を都心のビル型納骨堂に移したり、廃墓を考える人も増加中。では、実際に「墓じまい」に直面した当事者と、お墓にまつわる多くの悩みに向き合ってきた専門家が語る実情は?

“墓”の継承は女性に託される時代に

「『もっと近場にあったらお墓参りに行ってあげる』って娘が言うのよ。私たち夫婦が死んだら、どこへ葬ってもらうか決めておかないと子どもたちが困るのよね。自分たちは、近くの霊園でもビル型の納骨堂でもいいんだけど、そうなると田舎のお墓はどうすればいいと思う?」

実家の墓所を継いだわが姉が、こう聞いてきた。中国地方の山間にある実家の墓は、4代前の祖先が小高い山の中腹を切り開いて設けた私有地にある。墓地には石塔が5基並んでおり、半分は土葬だからほぼ土に還っているはず。「誰も墓参りに行けなくなったら、そのままそっとしておいて自然に還したらいいんじゃない」と答えた。

掃除に行く人もいなくなったら山の緑に覆われるだけ。固定資産税は誰かが払い続けなくてはならないが、今さら掘り起こして改葬することもないだろう、と三女である筆者は考えたのだが、姉が納得したようには思えない。

墓じまいが終活の大きなテーマになっている。そこには決まり事や守るべき礼儀はあるのだろうか。葬儀、墓、供養を実務面だけでなく文化面からもとらえた「葬祭学」を提唱し、自ら教鞭も執る葬祭カウンセラーの二村祐輔さんに聞いてみた。

「墓じまいには2つの意味があります。『墓仕舞い』と『墓終い』です。前者は墓を移して供養を続ける改葬。後者は文字通りお墓を撤廃すること。どちらの墓じまいなのかによって、手順も心構えも違います」

二村さんの主宰する「日本葬祭アカデミー教務研究室」に寄せられる相談の9割が、遠方の墓を近くの霊園や納骨堂などに移したいという改葬についてだという。しかも相談者の大半は遺族となった女性。かつては家長、長男の役目だった墓の継承が、嫁や娘に託される時代となった。そこには、女性が配偶者の妻として、あるいは娘として親の介護に携わり、みとった後の供養まで託されることが多いという事情が垣間見えると、二村さんは言う。