就職して出会ったモラハラ上司
でも卒業して、またもや試練が押し寄せました。フォロワーの多い僕に目をつけた、インスタ部門がある芸能事務所から声をかけられて所属したものの、そこの取引先であるネット放送局の総合プロデューサーに引き抜かれ、その方の事務所に所属。そこで何度も騙されてしまったんです。
彼が、僕には「報酬が0円だけど、実績になるからやったほうがいいよ」と言っていた仕事があったのですが、その方はのちにお酒に酔って「あの仕事のギャラは約200万」と自ら口を滑らせた。また、僕が企画して決めてきた仕事に、自分がかわいがっているモデルを勝手にブッキングしたうえ、クライアントと揉めてその仕事自体が消失してしまったことも。
それに、男女問わずモデルのヌード撮影を強要し、僕が後ろめたくなる既成事実をつくった。さらに「事務所をやめたい」と言えば、「お前が撮ったヌード写真をばらまく」とか「これまでお前に投資した700万円を返せ」と脅されました。
地方から上京したばかりの僕は無知で、情けないことに「この世界ではそんなものなのかな」と少しの疑念も抱かず、一所懸命仕事に没頭したんです。後でそれがまっとうな処遇でないと気づき、腹が立って虚しくもなりましたが、闘おうにも弁護士を雇う経済的余裕はない。
というより、「鎖」につながれわずかな「餌」をもらう環境に3年あまりも浸ると、抵抗できない状態になるものなんですね。「逃げ道は、どこにもない」と諦めてしまい、小・中・高といじめを受けても「死にたい」とまでは感じなかったのに、正直、何度も命を絶ちたいという衝動にかられました。
それでも、昨年4月の契約更新時、退職の意志を問題のプロデューサーへ毅然と伝えた。その勇気をくれたのは、有名なクリエイターや社長たちの生き方が描かれた本や映画です。
そして、フォロワー数100万を超えた頃から、老舗ブランドから憧れのパリコレなどの有名ファッションショーに招待していただけるようになって。ジェレミー・スコットさんやポール・スミスさんなど、たくさんの著名なデザイナーに直接ご挨拶させていただく機会に恵まれました。
みなさん、無名の僕にも温かく接し、ツーショット写真も快く引き受けてくださる。第一線を歩む彼らの懐の深さを知れば知るほど、問題のプロデューサーが、「口だけ立派なつまらない人」と確信できて、理不尽な囚われから解放されたのです。