赤い鉄骨の建造物に漲るのは

陽が落ちてから、我々は最後の目的地である、東京タワーのよく見える古いビルの屋上に、イスを設置した。黒い夜空の中に赤く浮かび上がった東京タワーには、毅然とした、揺るぎない存在感があった。

エッフェル塔というよりは、昭和の特撮映像のファンタジックなセットのようでもあるが、この赤い鉄骨の建造物には、スカイツリーを見ていても感じられなかった生命力が漲っていた。動き出すことはないにせよ、地面にたくましく根を張った太い樹木並みの有機性があるのだ。

ちょうどその前に、台東区の谷中にある巨大なヒマラヤ杉の下でいっぱい飲んできたばかりなので、余計にそういう印象を抱いたのかもしれない。出演者3名は、撮影開始当初に比べ頭の回転も速くなくなっていたが、撮影の最後にここに来られてよかった、という感慨では一致した。

スカイツリーが世界屈指の経済大国としての達成感やトロフィー感を醸しているのに対し、東京タワーには、戦後復興の「なにもないところから全身全霊で国力を取り戻します!」という頑なな意思が感じられる。虚勢も自負も虚栄も驕りも一切纏わない、ただただ実直な賢明さと前向きな思いだけで象られている。

ビルの屋上でぬるい発泡酒を飲みながら、そんな東京タワーをぼんやり見つめていると、「いろいろあるだろうけど、まあ、頑張れよ!」と、親しげに肩を叩かれ激励されているような心地に陥った。他の出演者も同じく、焦れる撮影スタッフを前に、真夏の夜の東京タワーにいつまでも酔いしれていた。