「人気絶頂の20代後半の大事な時期に、芸能の仕事ができないことに後ろめたさを感じていました。同年代の俳優さんたちが多く活躍するなか、僕だけが取り残されている気がして……。」
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理想先行型の完璧主義の人が陥りやすい病気

90年、高3になる春に上京し、すぐにドラマで俳優デビューしました。当時、僕は4年制の夜間定時制の高校に通ってひとり暮らしをしていましたが、ちょうどバブル期で東京は家賃が高く、給料が8万円のところ、家賃は7万円。定時制の学費は夜の給食費込みで1万円と安かったけれど、それを払ったら給料が底をついて、朝ごはんも定期券も買えない。貧乏生活で痩せこけてしまっていたんですが、そんな僕の姿がユニセックスな男子……つまり「フェミ男」としてもてはやされて。（笑）

またテレビに出る時に、友達のお店の小さすぎて売れ残っていたTシャツを着ていたら、「チビT」として大流行もしました。世に出るチャンスに恵まれていたというか、「あれ、僕って世界に求められている人間なのかな？」って勘違いしましたね。（笑）

思わぬ理由で、一気に自分の存在がたくさんの人に知られたことに戸惑いつつも、大人たちの期待にこたえなければと歯を食いしばって頑張っていたんです。

ところが、25歳の時、文字通り歯を食いしばりすぎたせいか、気づいたら口が開けられなくなっていた。食事も満足にとれず、人と話していて「顎が動いてないよ」と指摘されることもありました。病院へ行き、告げられた病名は「顎関節症」。顎の関節が痛み、口が開けられなくなったりする病気で、原因はストレスではないかとのこと。理想先行型の完璧主義の人が陥りやすい病気なのだそうです。

俳優業を休んで治療を始めたのですが、僕は歯にかぶせるマウスピースすら噛み砕いてしまうほど、顎に力が入りすぎていた。そんな時、通っていた歯医者さんから紹介された鍼灸院で、「まず凝り固まった全身をほぐし、バランスよく筋肉を鍛えて顎だけに力が入らないような体作りをしましょう」と、勧められたのが縄跳びです。

縄跳びなんて簡単に思えますよね。でも、僕は全身の筋肉が固まっていたので、最初は10回も跳べなかった。まずは連続で100回跳べるようになることを目標にするよう言われました。さらに、連続500回跳べるようになったら怪我をしにくくなるとのことだったので、半年近くかけて達成。その後、筋トレとランニングを始めました。