西浦博・京都大学教授(撮影:本社写真部)
感染拡大が続く新型コロナウイルス。不必要に感染を広げないためには打つべき手は早く打つ必要があるはずですが、ここ日本では、経済か感染防止かの間でなかなか方針が定まらないように見えます。

今年の春、日本が新型コロナに襲われた際、厚生労働省のクラスター対策班でデータ分析に従事し、「8割おじさん」と呼ばれたのが西浦博・京都大学教授でした。現在は、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(以下、アドバイザリーボード)に参加しています。その西浦教授の目に、今の日本の状況はどのように映っているのでしょうか。

今年2月からの「第1波」のコロナ対策の体験をまとめた著書『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!』(聞き手・川端裕人/中央公論新社)の刊行を前に、お話を聞きました。(撮影=本社写真部)

Q. これから感染はどの程度まで広がる恐れがありますか?

今後、どの程度まで広がるかは、街で伝播が起こりそうな屋内を中心にどんな行動パターンになるのか、どんな対策をするのかによります。

アドバイザリーボードの資料にも書かれていますが、10月末までは東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城、京都、大阪、兵庫、愛知――これら都府県の都市部において、明確に指数関数的な感染者数の増加が起こってきました。それが東京や埼玉・神奈川と北海道では10月末に、大阪を除くその他の地域では11月第1週が過ぎた頃に、そして、大阪ではさらにそれより1週程度遅れて指数関数的な増殖が落ち着きを見せつつあります。

特徴的なのは、第二波では「実効再生産数」(ひとりあたりが生み出す二次感染者数)が小さめで、1.1~1.3くらいの範囲でゆっくり増えていたのですが、それが関東地方では高いときに1.5くらい、関西では一時的ではありますが2に至るくらいのスピードで増えていました。北海道も指数関数的な増殖期にはそれくらいのスピードで増えていたように見受けられます。

これは良いニュースではなくて、今までと同じような対策を実施することによって一人当たりが生み出す二次感染者数が1を切れるのかどうかというのが、ひとつのポイントになると思われます。今のところ、札幌で明確に減少傾向に転化したことを除いて明確ではなく、リアルタイムで注意深く細かにデータを見ていく必要があります。