『現代中国の秘密結社 -マフィア、政党、カルトの興亡史』(著:安田峰俊)

「孔子学院」を含む中国当局の対外工作戦略

現在の中国致公党は、党章程のなかでマルクス・レーニン主義と毛沢東思想・鄧小平理論・習近平新時代中国特色社会主義思想などの「堅持」をうたっていたり、前主席の羅豪才が中国共産党との二重党籍を持っていたりと、もはや独立した政党というより共産党の一部門のような存在になっている。

つまり、彼らは名誉職のお飾り組織というわけなのだが、お飾りなりの重要な役割もある。特に致公党の場合、1980年代以降は華僑の政党としての顔を利用して、中国当局の対外工作戦略の担い手としてかなり活発に活動しているのだ。

致公党は現在、中国共産党統一戦線部の系列下に位置づけられており、対外統戦──つまり、海外で親中派の協力者を確保・育成したり、他国の社会や海外華人たちに親中国共産党的なムードを作り出して「共産党的」な価値観を広めたりする任務を担当している。

日本に対しても、日中友好イベントや学術交流活動(最近話題の中国政府主導の中国語教室・孔子学院も含む)などに出席する中国側の顔ぶれを注意深く観察すると、致公党のメンバーが見つかることがある。興味がある人は、拙著『現代中国の秘密結社』に具体例が書かれているのでぜひお読みいただきたい。