チャン・ツィイー以外にも…
ちなみに致公党はチャン・ツィイー以外にも有名人の党員が多く、『バイオハザードV リトリビューション』や『トランスフォーマー/ロストエイジ』、『MEG ザ・モンスター』などのハリウッド映画に出演した有名美人女優のリー・ビンビン(李冰冰)、山積みにした札束を配るなど桁外れの慈善活動で一昔前に話題になったことがある慈善活動家の富豪である陳光標、大御所歌手の朱明瑛など、中国に詳しい人ならばすこし驚くような人物が名を連ねている。
もっとも、チャン・ツィイーについては2012年12月3日の党大会出席以降、目立った政治活動はほとんど見られない。その理由は、おそらく彼女が入党した理由とも密接に関係しており、当時の中国共産党の高官の動向がからんでいるとみられるのだが──。こちらは拙著で詳しく書いた。
「秘密結社」という言葉はいかにも怪しげで、オカルトや陰謀論的な匂いがプンプンする。だが、中国に実在する秘密結社は意外と地に足がついた(?)存在だ。彼らは中国国家を操るほどの力はないが、いっぽうで現代中国の有名人やさまざまな事件と広く浅いつながりを持っており、思わぬ場面でふと顔を出す存在なのである。
安田峰俊
ルポライター
1982年滋賀県生まれ。ルポライター。立命館大学人文科学研究所客員研究員。広島大学大学院文学研究科博士前期課程修了(中国近現代史)。2019年、『八九六四――「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)で大宅壮一ノンフィクション賞・城山三郎賞をダブル受賞。他に『さいはての中国』『もっとさいはての中国』(ともに小学館新書)、『和橋』『移民 棄民 遺民』(ともに角川文庫)など著書多数。