「あなた」「ジョニィへの伝言」「喝采」の女性たち
今回のカバーアルバムの楽曲は《おんな唄》で統一しました。男の私から見て、それぞれの歌に登場する主人公の女性は、可愛くてたまらない。リアルタイムで聴いていた時には、歌詞の意味さえよくわかっていなかったけれど、大人になった今ならわかるんです。一人の女性のなかに、清純さと同時に、激しく情熱的な女性が存在することがあって──。昔から私にとって女性は神秘的な存在なのですが、それもそのはずだよな、と。
「あなた」は、乙女の祈りのような歌詞が印象的ですよね。うちの近所に幼稚園があって、玄関の壁に子どもたちの絵が展示してあるのを散歩の途中に見つけました。そこには、パパ、ママ、お姉ちゃん、ワンちゃんと、この絵を描いたのであろう女の子の姿があった。
ピュアだという点において、「あなた」のヒロインと、この女の子のどこが違うの? と私は思う。その一方で、「古い暖炉のある小さな家」も「いとしいあなた」さえも、幻想なんだと確信している自分がいます。純な女心と残酷な未来とのコントラストが哀しくて、だからこそ私は主人公の女性に共感を覚えるのでしょう。
あるいは「ジョニィへの伝言」の踊り子は、恋しい男に約束を違えられたのに、「元気に出て行ったと伝えて」と言い残す。私は、すべての女性が備えているであろう寛容さや潔さを感じ取り、安らぎを覚えます。また、「喝采」の歌い手は、どんなに絶望的なことがあろうと、幕が開けばまた恋の歌を歌う。女性の人生そのものじゃないかと思うわけです。