子どもを怒る回数が激減した
板谷 頼りにしてますよ~(笑)。ところで、新型コロナウイルスによる活動自粛期間中、聡美さんはどんなふうに過ごされたんですか。
小林 活動自粛の時期って、世の中がわちゃわちゃせずに、みんなが一所懸命、静かに考えているみたいな雰囲気があったでしょ。もちろんコロナで亡くなられた方もいるし、ご家族が感染してつらい思いをされた方もいる。そういった意味では、とても大変な状況ではあったけれども、私自身は心静かな時間を過ごすことができた気がする。
板谷 私も不思議と不安感は大きくなかったです。なんていうのかな、神様に「みんな一度立ち止まれ」と言われているような気がして。それまで日々の忙しさのなかで、削ってきた時間ってあるじゃないですか。私の場合、子どもと一緒に過ごす時間が、絶対的に不足していました。でも、自粛中の2ヵ月間は、みっちり一緒にいることができた。それは子どもたちにとっても私にとってもいい時間だったと思うんです。決してネガティブな時間ではなかった。
小林 飲食店など直接お仕事に影響のあった方は、さぞ大変な思いをなさっているだろうと思うけど、私たちの仕事はもともと不安定。浮き沈みが激しいのは今に始まったことではないから、どこかお気楽なところがあったような……。
板谷 そうなんですよね。コロナであろうとなかろうと、普段からいつ仕事がなくなるかわからないフリーランスの立場であることは変わらないから。
小林 生活はどうだった? 変化はなかったの?
板谷 えーっと、大量の米を炊くようになった、かな。
小林 ああ食べ盛りが家にいると。お子さんいくつだっけ?
板谷 12歳と8歳の男の子2人です。もう米の減りはハンパなかったですね。3ヵ月間、ずうっと米を炊き続けていたような感じで。
小林 子どもが毎日家にいるのといないのとでは、生活も変わるでしょ。
板谷 生活そのものというより、私のかかわり方が変わりました。今まで、子どもたちを「早く、早く」と急かしたり、「こうして、ああして」と指示を出したりしてきたなあと思う。なぜなら、私自身が時間に追われていて余裕がなかったから。でも、自分に時間ができたら、急がせる必要がなくなっちゃった。それで子どもを怒る回数が激減し、毎日がゆーったり。庭で作る野菜の種類も増やしました。農作業する時間がたっぷりとれるようになったこともあって。
小林 板谷の家のあたりは、自然に恵まれているものね。
板谷 鶏も飼いたいんです。自分たちの口に入れるものは、できるだけ自分たちで作ったものにしたい、という気持ちが、コロナ禍を機に以前より強くなったかもしれない。買い物に行かなくていいくらい庭で収穫できたら最高ですねえ。聡美さんの暮らしには変化はなかったのですか?
小林 もともとのんびり暮らしてたから、影響されることもあんまりなくて。強いて言うなら、ごはんのためにかける時間が少し増えたかなあ。丁寧に乾物を戻すとか、豆を煮るといったことを、おもしろがってやるようになりました。
板谷 私も、手間のかかることをじっくりできるようになったと思う。手間暇かけることを楽しむというか。