小林 ねえ、板谷が10年くらい前から、ファッションブランドを立ち上げたり、ニュースキャスターに挑戦したりしてきたのは、どういう心境で?「このままでいいのかな?」と悩んだ結果なの?
板谷 そうです。何もできていないのに、「わかっている風」「できている風」になっちゃうことにモヤモヤしてしまって。このままでいいのかな? と考え、新しいことをやってみよう、と思いました。
小林 舞台に挑戦したのもこの流れなんだね。板谷の気持ち、わかる気がする。あのね、今回のドラマで好きなシーンがあって。二人でたき火をするところ。パチパチ音をさせながらドンドン燃やしていく。たまっていくモノって、知らないうちにその人自身を重くしていくよね。
板谷 ええ。淀んでいく感じがします。
小林 俳優の仕事にもそういうところってあるよね。前の仕事を燃やして消して、次の仕事に向かっていく。
板谷 一つの役を演じ終えたら気持ち的にもリセットしたい。一つの仕事を終えると髪を切る人もいるけど、あれも同じでしょうね。
小林 もしかしたら、俳優に限らないのかも。リセットしたい、たまっていくモノを全部燃やしてしまいたいと思っている人、結構いるかもしれないね。
我を忘れる瞬間がとても幸せ
板谷 考えてみればこのコロナ禍も、一つの区切りというか、これまでのやり方をリセットして、新しいことを始めたりするきっかけになっていますよね。聡美さんは、コロナ禍を機に新しく始めたことってありますか。
小林 ピアノを始めたよ。
板谷 わあ、始めたんですか。素敵。
小林 うん、シニアのピアノ(笑)。近所のピアノ教室にかよっているんだけど、すごく楽しい。嬉しくて毎日ピアノに触ってる。(笑)
板谷 小さい頃に習っていたんですか?
小林 全然やったことないの。もうね、残りの人生でどこまで上達できるのか、時間との闘いですよ。8歳の子が18歳までレッスンしたら、そりゃあものすごく上達するでしょう。じゃあ、55歳の私が65歳まで続けたらどこまでできるのか。ちょっと難しいものがあるなあとは感じつつ、日々練習。お風呂の中では指を開いて伸ばしてストレッチ。地道な努力をしています。
板谷 へえええ。でもなんでピアノだったんですか。
小林 これまでウクレレ、クラリネット、三味線など、楽器は好きで習ったこともあったけど、ホントはずっとピアノをやりたかった。お楽しみはとっておくタイプだったのかな。70歳や80歳になって始める人もいると聞いて、よしっ、と思って。
板谷 かっこいいなあ。