恋人との関係は「老い」と向き合うことでもあった
地味な題材ですが、どうしても世に出したくて自費出版も考えました。幸いにも『ベルサイユのばら』でお世話になった出版社が興味を持ってくれまして。10代の頃からの何十冊とあるノートから歌を選ぶのは、昭和、平成と人生を振り返る作業でしたね。
ですから、60歳のときに25歳年下の男性と恋に落ちてからの激動の日々をつづった最終章「最後の恋」は、オマケのつもり(笑)。照れくさくもあるし、表現としてまだまだ拙いなあと思ってしまいます。
ただ彼との関係と同時に、「老い」と真剣に向き合うことができたのは自分にとって大きな収穫だったと感じます。〈この人を忘れてしまう日が来るのかいつか私でなくなる時が〉。最後に私のことも忘れてしまった母と私自身を重ねて詠んだこの歌は、まさに切実な今の思いなのです。
タイトルにある「骨」は、亡くなった父、そして戦場で倒れた兵士たちの骨でもあります。また、老いた愛猫をなでたときに感じる背骨も……。こうして、私の人生に立ちのぼる生と死、喜びや哀しみを見つめることで、新しい短歌が日々生まれてきます。