夫が危篤状態になっても着飾るのを忘れない

最初の違和感は、義父の入院が決まった時に義母が「個室にしてください」と言い放ったこと。貯金もなく、これからの治療にいくらかかるのかも定かでないというのに、なぜそんな後先考えない行動ができるのか不思議でならなかった。

さらに看護師への心づけと言っては、高級菓子を買いまくる。私たちの結婚式にも誕生日にも、1円だって出してくれたことはないのに、見栄を張りたいからか、他人様にはあたかも大金持ちのように振る舞うのである。

そのくせ、義父が嘆くほど病院の見舞いは私に任せきり。たまに来たかと思えば、2000円近く払ってタクシーで病院の玄関先に乗りつける。バス停は義母宅から歩いて10分ほどのところにあり、そこから300円で来ることができるのに、だ。「その差額で夕食が賄えるだろう」と、私は思ってしまう。

また、自分を《いいとこの奥様》に見せたくて、洋服や宝飾品などにも大枚をはたくのを厭わない。義父が危篤状態になった時、病院にいた私が義母に電話で知らせたのだが、全身これでもかというほど着飾り、一番高い指輪をつけて現れたのを見て、腰が抜けそうに驚いた。長年連れ添った夫の生死より、自分が他人にどう見られるかが最優先事項だとは……。