「この世に何ひとつ自分のものはない――そう気づいたらとてもラクになりました。」(撮影:川上尚見)
現在発売中の『婦人公論』3月9日号の表紙は女優の高橋惠子さんです。長年住んだ家を手放すと決めて、モノをたくさん捨てたことで気づいたことがあると語る高橋惠子さん。身軽になってチャレンジしたものは――。発売中の『婦人公論』からインタビューを掲載します。(構成=内山靖子)

背負ってきたものを下ろして身軽になったから

2019年の秋、約30年間暮らした家を手放すことに決めました。結婚後、2人の子どもの母となり、緑の多いところで子育てをしたいと思っていたときに、東京郊外に100坪ほどの土地を見つけて購入し、2階建て9LDKの一軒家を建てたのです。

一時期は、80代の私の母、夫(映画監督の高橋伴明さん)と私、娘とその伴侶や孫たち4世代で同居して、人間9人、犬3匹、猫11匹、カメ1匹の大所帯になったこともありました。けれど、6年前に母が亡くなり、息子や娘一家も独立すると、夫婦2人で暮らすには広すぎると思うように。そこで、娘の家の近所のコンパクトなマンションに引っ越しました。

そのとき、本当にたくさんのものをきれいサッパリ捨てたんです。母の遺品を整理し、大家族用のソファーやテーブルなどの家具を処分して、衣類や食器も半分以下に。だって、人間には寿命がありますからね。どんなにたくさんものがあっても、あの世には決して持っていけない。

購入した土地だって、便宜上は自分の名義にすることができますが、神様の家の一部に住まわせてもらっているだけ。この世に何ひとつ自分のものはない――そう気づいたらとてもラクになりました。

『婦人公論』3月9日号の表紙に登場している高橋惠子さん(表紙撮影:篠山紀信)