日常的な光景として、動物の骨や角が住まいのあちこちに置かれている。

閑静な住宅地でニワトリを飼う

仕留めた獲物の内臓は、夫がある程度現地で抜いてきますが、精肉作業時にも、いわゆる雑肉が出ます。たとえば銃創のまわりは傷んでいたり骨が砕けたりしているので、そのまわりは食用には適しません。そこで夫は「そうだ、ニワトリを飼えば雑肉を食べてくれるんじゃないか」と閃きました。

「え、ニワトリなんて飼えるの?」と少しワクワクしたものの、田舎でもあるまいし、そんな無茶な、とすぐに思い直しました。それに、私が世話をしなくてはいけなくなるのは目に見えていますから。

でもいつも通り、私の心の声には関係なく物事が進んでいき、結果的に歴代で7羽のニワトリを飼うことになりました。しかもそのうちの1羽がオスだったので、鳴き声が閑静な住宅街に響き渡って……。夫と、卵を持ってはご近所に挨拶してまわりました。脱走を防ぐために網を張ったり、柵を作ったり大変なことも多かったのですが、特に末の娘は、毎日ニワトリと遊んだり卵を採ったりするのが楽しくてしょうがなかったようです。

死んでしまったニワトリや2羽目のオスなどは、狩猟した獲物同様、解体し、家族みんなで食べました。かわいがっていた生きものであっても、おいしいことに変わりはないんですね。子どもたちは幼いときから、そういう命のあっけなさ、みたいな感覚を身をもって学んだのではないかと思います。

夫のもくろみ通り、ニワトリはものすごい勢いで雑肉を食べてくれました。鳥は恐竜の生き残りなんだな、と納得するがっつきぶり(笑)。台所の残飯もほぼ全部食べてくれるので、わが家の生ゴミは限りなくゼロに近づきました。

さらに夫は子犬や子猫も連れてきて、家はますます大所帯に。解体後の動物の骨は犬がかじりますし、内臓も火を通して干せば犬のおやつになります。こうしてわが家では、すべてが循環するサイクルができあがりました。

箱のなかで飼われているのはチャボの雛