イラスト:山本祐司
生と死、その境界線はきっと存在する──。それを間近に見たときに、命の大切さを実感できるのです。(「読者体験手記」より)

死んだ父が、会いにきてくれた

私がまだ10代のとき、父が脳梗塞でこの世を去りました。その悲しみを受け入れるには、当時の私はまだ幼かった。しかし、私以上に母のほうが悲しみは大きかったのでしょう。以後、母は私を置いて飲みに行くなど生活がすさみがちになり、まるで母の世界から、私が消えているかのように感じることもありました。

そんなある夜、私は夢のなかで、父のお墓参りをしていました。すると、墓石がグラグラと音を立てて倒れ、父が現れたのです。

「元気にしているか?」

父はそう話しかけ、私の頭を撫でました。

「父さんはいつも、お前のことをちゃんと見ているよ。だから、何も心配しなくていいんやぞ」

私は、ただうなずくだけ。

「父さんは、毎日宴会や。ちょっとお前ものぞいてくか?」

そう言うと、父は私をひょいと抱き上げ、真っ白い世界へ。そこには、楽しそうに宴をしている人たちがいました。頭が細長く、ひげを生やしていたり、お腹がぽっこり出ていて、耳たぶが大きかったりするおじいちゃんたちがいたのです。